写真1●NTTの花澤隆・取締役研究企画部門長
写真1●NTTの花澤隆・取締役研究企画部門長
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写真2●NTT R&Dフォーラムの講演「ICTのパラダイムシフトに挑戦するR&D」の資料
写真2●NTT R&Dフォーラムの講演「ICTのパラダイムシフトに挑戦するR&D」の資料
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 「NTTにとって,今後NGN(次世代ネットワーク)に続く大きなプロジェクトとなるのは,クラウド・コンピューティング基盤技術への取り組みだ」――。NTT持ち株会社の花澤隆・取締役・研究企画部門長は2009年2月19日に開催した「NTT R&Dフォーラム 2009」で,こうNTTグループの研究開発の新たなテーマを展望した(写真1)。

 「ICTのパラダイムシフトに挑戦するR&D」と題した基調講演で花澤部門長は,NGNの開発の狙いや,NGN上で今後提供可能になるサービスの開発状況などを紹介。さらに今後,研究開発部門が長期的に取り組む研究開発の方向性などを示した。

 花澤部門長によれば,今後,ICT技術のトレンドが「情報システムの所有から,ネットワークを介した利用」へとシフトしていくにつれて通信事業者にも「クラウド・コンピューティングなどで必要とされる,大規模なコンピュータ資源の管理や連携技術などのノウハウが重要になってくる」という。

 だがNTTは,「これまでの蓄積からネットワーク技術の先進性や運用能力に強みがあるが,大規模なコンピュータ資源の運用や連携などの分野にあまりノウハウを持っていない」(花澤部門長)。クラウド・コンピューティング分野では米Googleや米AmazonのようなIT企業が先行し,国内勢力の競争力低下が危ぶまれている。これに対しNTTは「大きなプロジェクトとして,今後の社会インフラを担う,大規模・高信頼なキャリアグレード・クラウド・コンピューティング基盤技術の開発に取り組む」という。具体的には,(1)広域分散したデータセンターの間で,負荷に応じたサービス提供機能の資源を再配置したり,(2)サーバーの性能とネットワーク帯域を連動させたリソース割り当て機能などを開発することなどを目指す。

 開発に当たっては,オープンソースや既に開発済みの技術なども積極的に取り入れ,パートナーとの協業による研究開発も推進するという。これらの成果を,NGN上で構築が始まっている「SaaS(software as a service)基盤」の安定運用や信頼性向上に役立てる狙いだ。

 一方,長期的な研究開発の方向性については,「“量”,“質”,“自然さ”といった『コンテキスト』を極める方向に進んでいる」という。これらの要素技術が集積することで2020年頃には,「速度と通信端末の数に応じた特性を持つ3種類のネットワーク・サービスが実現する」と展望した。具体的には,(1)超高臨場感を備えたコミュニケーションを実現するヒュージバンド・サービス,(2)タグなどの多種多様で膨大な端末が少量の通信をするタイニーバンド・マスサービス,(3)IPサービスの延長上にあるブロードバンドパケットサービス――を想定しているという(写真2)。

 こうしたネットワークを実現するためには,NTTが持つ光ネットワークと無線通信基盤をシームレスに利用可能する「光・無線融合アクセス技術」や,ネットワーク資源を適宜分割,再構成できる「仮想化ネットワーク技術」の開発が必要になるという。講演の最後に花澤部門長は,こうした未来のネットワークのプラットフォームとして,NGNが将来重要な役割を果たすと確信している,とまとめた。