「2009年のテーマは3点ある。戦略的パートナー企業との協業,コンテンツの海外展開,研究開発の製品化だ」。アプリックス代表取締役の郡山龍氏は,2009年2月16日に開催した同社2008年度(2008年1月~2008年12月)の決算説明会で,2009年に同社が力を入れるテーマに言及した。

 戦略的パートナーとの協業では,「日本のサービスが高い競争力を持つ」とした上で,要素技術を持つベンダーと一緒に海外市場に展開するという。具体例が,メディアシークとの協業による2次元バーコード利用型のゲーム配信。紙媒体に印刷してある2次元バーコードを読み取ることで簡単なゲームをインストールするというもので,高速のデータ通信網が整備されていない地域での需要を見込んでいる。

 同社は海外市場を「データ通信環境が整備された地域」,「データ通信環境が未整備な地域」,「中産階級の比率が高くなってきた地域」に分類し,それぞれ別個のソリューションを提供する。

 データ通信環境が整備された地域には,国内の利用環境に近いものを提供する。フィリピンやタイ,ポーランド,モロッコなどはCDMA2000 1x EV-DOのネットワークがあり,国内でKDDIに採用されているBREW向けJava実行環境を,その上の膨大なアプリと共に移植できる。

 データ通信環境が整備されていない地域では,前述のメディアシークとの2次元バーコードのように,各国の事情にあったソリューションの展開が重要とする。具体的な国としては,インドネシアやエジプト,南アフリカ,アルゼンチンなどだ。

 中産階級の比率が高くなってきた地域としてはボリビアやブラジル,コロンビアがある。これらの国では,娯楽が普及し始めており,ゲーム専用機よりも携帯電話機で楽しめるゲームが受け入れられやすいとみる。国内でも提供されている体感ゲームを例として紹介した。

 成熟市場向けには,オープンプラットフォーム向けソリューション,モバイル・マッシュアップ向けソリューション,LiMo向けソリューションを提供する。詳細は,2009年2月16日からバルセロナで開催される「Mobile World Congress 2009」に合わせて順次発表する。このうちオープンプラットフォーム向けソリューションは,「大きな出荷を期待できるものだ」(郡山氏)とした。

 国内向けでは,生活に即したソリューションが有望という。「エンタテインメント分野に比べて地味ではあるが,社会インフラの一部として活用される,社会性の強いものが中心になる」(郡山氏)という考えを披露した。

 同社の2008年度決算は,売上高が51億9500万円,経常利益が2億8100万円,営業利益が2億7600万円,純利益は1億900万円だった。世界規模の経済危機という逆風の中,本業の業績指標となる営業利益は2倍以上になった。営業利益の向上には,新興国市場での出荷増,KDDIへのJBlend標準搭載,受託開発からライセンス・ロイヤルティ事業へのシフトなどが効いた。

 2009年度については,売上高を45億円,経常利益は3000万円,営業利益と純利益はゼロとみる。2008年度に比べて売上が減少するのは,欧米市場が「かなりひどい状況」になっていることを反映したものだが,「厳しめにみた数字だ。開発拠点が海外にあることから,円高によって利益が増える可能性がある」(郡山氏)と付け加えた。