総務省は2009年2月13日,2011年7月以降のBSデジタル放送(次期BSデジタル放送)で使う第21・第23チャンネルの電波干渉問題の対策に約12億円が必要になるという試算結果を発表した。次期BSデジタル放送の電波干渉問題の対策を検討している組織である「一部の形態のBS放送受信システムの電波干渉問題に関する連絡会」が,自らが作成した電波干渉問題の調査・対策フローを想定して,この問題の解決に必要な費用額を算出したものである。

 連絡会の調査・対策フローによると,解決に向けた作業の手順は次の通り。(1)推計400~500カ所の要対策エリアを特定する,(2)電測車やポータブル測定器を使って,判定基準値を超えるレベルの漏えい電波を発生している受信システムを抽出する,(3)対策が必要な受信システムを調査して,漏えい電波の発生個所と原因を特定したうえで,必要な対策(ブースターの利得調整や交換,分配器の交換など)を行う――である。連絡会は,対策の実施を実際に担う関係者により構成する「対策実施協議会」を連絡会の下に設置することを決定した。

 総務省は同日に,連絡会の構成員である放送衛星システム(B-SAT)から,「BSデジタル放送の普及・発展を支えて周波数の有効利用を推進するために基本的に弊社が負担する用意がある」という提案を受けたことを明らかにした。この提案を受けて総務省は,連絡会の他の構成員に対して協力要請を行った。総務省は,「B-SATからの申し出はあくまで任意のものであり,総務省はこの提案を国民の共有財産である貴重な周波数資源の死蔵の回避につながるものとして前向きに評価できる」としたうえで,「今後,対策実施協議会において調査や対策を円滑に推進するため,連絡会のほかの構成員に必要な協力を個別にお願いしなければならない局面が発生する可能性がある。協議会から協力の要請があった場合には,可能な限りこれに応じて欲しい」と要請した。

 総務省の想定スケジュールによると,2009年4月頃に協議会は調査と対策を開始する。調査と対策は2010年3月前後に終了する。協議会は同年4月頃に連絡会に対策実施報告を行う。連絡会による協議会の報告の承認を経て,同年5月頃に総務省は次期BSデジタル放送の第21・第23チャンネルの委託放送業務認定申請の受け付けを開始する。次期BSデジタル放送用周波数のうち,第5,第7,第11,第19チャンネルの委託放送業務の認定申請受け付けは2009年2月24日に開始されるため,第21と第23チャンネルが同年同月の申請受付の対象から外れることが確定した。第21・第23チャンネルの委託放送業務の認定時期は2010年9月頃に,これらの周波数を使う新たな次期BSデジタル放送の開始時期は2011年10月~2012年9月頃になると想定する。

 なお,約12億円の費用についてB-SATは,「電波干渉問題関連の必要経費は弊社のこれまでの事業計画を変更して対処する。特に電波干渉対策経費などについては,第21,第23チャンネルの固有の事情に基づくもので,実際に当該チャンネルを使う事業者に負担をお願いするように中継器料金の体系を見直す考えだ」としている。ただし委託放送事業者の初期費用軽減の観点から,「10年間の分割負担とする方向で検討する」という。

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