米ライス大学は米国時間2009年2月9日,「確率的論理」と呼ぶ方式で演算する新型CMOS(相補型金属酸化膜半導体)である「Probabilistic CMOS(PCMOS)」を開発したと発表した。シンガポールのナンヤン工科大学(NTU)と共同で検証したもので,演算精度を犠牲にする代わりに,動作時の消費電力を減らしている。試作ASIC(特定用途向け集積回路)は,最先端の現行技術に比べ7倍高速であるにもかかわらず,消費電力が30分の1で済んだという。

 パソコン用プロセサなどのLSI(大規模集積回路)は,0と1の2値で演算するブール代数を採用している。これに対し,PCMOSは数値を厳密に2値化せず,ある程度の判定エラーを許容することで動作電圧を大幅に下げ,消費電力の削減を図った。既存のCMOS技術をベースとしているので,PCMOS製造の際に新たな装置を導入する必要がないという。

 研究グループはPCMOSが適する処理として,暗号処理の乱数生成や,高精細な映像が不要な携帯電話機向けストリーミング配信を挙げている。すでに暗号処理専用ASICを試作した。今後,携帯電話機やグラフィックス・カード,医療用体内埋め込み機器などに向けたLSIを試作する。