日本ヒューレット・パッカード(HP)は2009年2月9日、クラウドコンピューティング事業者に向けた製品やサービスを発表した。データセンター環境の運用管理を自動化・効率化するためのソフト「Insight」シリーズ、大量サーバーによる分散処理に向けて集積度を高めたラック型x86サーバー「HP SE2120」、理想的なクラウド環境に向けたITインフラの成熟度を分析するアセスメントサービスである。

 「HPは自社で大規模クラウドを構築・運用する経験と、外部の有力事業者に向けてクラウド構築のハードやソフト、サービスを提供してきた経験を併せ持つ。今回の製品群は、こうした経験から得た顧客のニーズを反映させたものだ」。同社でサーバーやストレージの事業を統括する松本芳武執行役員は、新製品群の意義をこう説明した。

 例えば米HPは2008年、全世界に85カ所あった自社システム向けデータセンターを6カ所に集約するプロジェクトにメドをつけた。IT資源の運用管理ソフトであるInsightシリーズやアセスメントサービスは、このデータセンター集約の過程でHP自身が開発した技術や実践したプロセスに基づいている。

 Insightシリーズの製品は3種類ある。「Dynamics-VSE」は仮想化ソフト上で動作するサーバーの性能分析やプロビジョニング(システム構成の変更や資源の配分)を実行するソフト。従来のVMwareに加えて、マイクロソフトのHyper-V上の仮想資源も管理できるようにした。「Orchestration」は、異なるIT資源の構成情報を基に資源配置を自動化する。「Recovery」は、Dynamics-VSEで管理する仮想サーバーを遠隔地間で複製したり障害時に復元したりするソフトである。

 アセスメントサービスは顧客企業のITインフラの現状を分析し、5段階で定義した成熟度モデルに沿った改善提案を示すもの。成熟度モデルはHP自身のデータセンター集約プロジェクトや、1000社を超える顧客企業へのコンサルティング実績に基づいて策定した。

 成熟度モデルでは、システムが個別最適になっている状態を第1段階とする。ここから、標準化、統合化、ITのサービス化、そしてITが経営に貢献するプロフィットセンターとなるまでの段階を定義している。今回はクラウドコンピューティングの利用や消費電力効率の改善といった観点を新たに取り込んだ。

 サーバー機「HP SE2120」は、既存の1Uサイズのサーバーに比べて幅を半分にした新製品。搭載プロセサはCore 2 DuoまたはXeonの1プロセサ構成で、日本HPの同クラス製品よりも消費電力を4~5割削減した。

 このSE2120は日本専用モデルという位置付けで、海外では基本的に販売しない。「日本のクラウド事業者は欧米と違ったニーズを持っており、独自のニーズを反映させた製品」(正田三四郎ISSビジネス本部ビジネスデベロップメント部長)であるためだ。具体的には1U型よりも集積度を高めた点や、消費電力の絶対量を減らした点を挙げる。

 日本HPは新製品やサービスの発表と併せて、顧客のITインフラ刷新を支援する全社横断組織「NGDCイニシアティブ」を発足させた。今後は「ハードやソフトといった製品、アウトソーシングや設備管理といったサービスを組み合わせて、データセンター事業者やクラウドサービス事業者、一般の顧客企業へサービスを提供していく」(松本執行役員)。