図1●戦略策定スケジュール
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図2●「デジタルジャパン戦略」概要
図2●「デジタルジャパン戦略」概要
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 2月6日、政府の次期IT戦略を検討する「IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」の第1回会議が開催された。専門調査会は、2015年までを見通した次期政府IT戦略と、現在の経済危機を克服するための今後3カ年の緊急プランをまとめるためにIT戦略本部が設置した。3月末までに緊急プラン案を、6月までに次期戦略案をとりまとめる(図1)。 座長は東京電力顧問の南直哉氏。

 会議ではまず、国領二郎慶応義塾大学教授より、議論のたたき台とするための案「デジタルジャパン戦略」(図2)について説明が行われた。概要は以下の通り。

《基本方針》
  • 金融危機後の世界の社会経済の在り方について明確なビジョンを持つ
  • 骨太の「ユーザ目線の政策の柱」を2~3本打ち立てる
  • 明確な期限付きの数値目標を掲げる
  • 当面の経済危機に有効な対策を提供する

柱1:デジタルパワーであらゆる無駄を排除するデジタルエコ社会
柱2:デジタルパワーですべての国民・地域社会・企業が元気になり、夢を実現できるデジタル成長社会

 続いて、出席した委員より意見が述べられた。現在の戦略「IT新改革戦略」の策定メンバーでもあった東京理科大学の伊丹敬之教授は、「IT新改革戦略でも出発点では少ない柱を立てるはずだったが、最終的には15本にまで増えてしまった」と前回の反省を語った。また、政府のIT戦略の推進体制について「IT戦略本部を中心とした現在の体制でよいのか。2015年には発展的に解消することを(次期戦略では)うたったほうがよいのではないか」と提案。さらに「ユーザー目線は重要だが、それだけでなく供給者目線の戦略の柱も立てるべきだ。例えばクラウドコンピューティングの雲の向こう側、つまり供給者側(産業側)の戦略を作るべき」とした。

 脳科学者でソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャーの茂木健一郎氏は「国民のチャレンジ精神を涵養(かんよう)するには安全基地(セキュア・ベース)としてのITインフラの構築が必要。住基ネットの番号をどう活用するかについても、行政が公共利益の増大のために挑戦的な取り組みをするための安全基地として位置づけて整備すべき。ただし、具体的な制度設計、システムがいい加減なものだと不幸な結果となる。かなり慎重な検討が必要だ」と発言、また「もっと若い人たちもメンバーに加えるべき」とコメントした。

 なお、この“たたき台”としての「デジタルジャパン戦略」については、広く提案を募るためパブリックコメントを実施する。また、専門調査会の議事要旨、資料は原則公開される。