米アドビシステムズ最高技術責任者(CTO)のケビン・リンチ氏
米アドビシステムズ最高技術責任者(CTO)のケビン・リンチ氏
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 アドビシステムズが2009年1月29,30日に開催したプライベートカンファレンス「Adobe MAX Japan 2009」に合わせて,米アドビシステムズ最高技術責任者(CTO)のケビン・リンチ氏が来日。合同記者会見に臨んだ。

 マイクロソフトやグーグルと同様に,アドビもクラウド型のサービスを提供するのかという質問に対しては,すでにそのような形によるサービス展開を行っていると回答。ナレッジワーカーの管理やホステッド・サービスの具体例として,同社が提供しているAcrobat.comやPhotoshop.comを紹介した。

 Acrobat.comは現在ベータ版の段階。日本のユーザーはPDFを生成するサービス,ファイルの共有,Web会議などのサービスを無償で利用できる。英語のみ利用可能なオンライン・ドキュメント編集ツールのBuzzwordも同サービスを通して利用可能だ。

 Photoshop.comはデジタル画像の補正や編集を行う同社の看板ツールAdobe Photoshopと同様の処理エンジンを導入したオンライン版アプリケーションという位置づけ。利用者は2Gバイトのストレージを使って画像の共有といったソーシャル機能を利用できる。

 Webアプリケーションを開発するWebサービスの「cocomo」βもクラウド型の取り組みのひとつに挙げる。cocomoはサーバーサイドで動くサービスのインフラと,クライアントサイドで動くFlexコンポーネントの両方をまとめた仕組みである。チャットやファイル共有,Webカメラによる映像や音声の共有といったコラボレーション機能を簡単に実装できる。cocomoは今後Acrobat.comの中で提供する予定と語った。

 ケビン氏はこうしたサービスを,顧客のニーズを把握した実践的なソリューションとして,すでに普及済みのFlashプラットフォーム上に提供できる点がアドビの強みであることを強調した。Flash技術をけん引役として,ツールベンダーとしてのアドビから,サービスベンダーとしてのアドビへとビジネスの装いを変えていく姿勢を改めて明確にした形だ。

 モバイル・コンテンツ市場のトレンドについてケビン氏は,コンテンツ作りにおいて大型スクリーンをターゲットとする制作フローはすでにトレンドに逆行した考え方だと指摘。デザイナーがコンテンツ作りの方向性を決めているという意味で日本市場は先進的だとする認識を述べ,「i-modeをはじめスモール・スクリーン上でのサービスで早い段階で対価を得てきた日本のビジネスのあり方は,世界のモデルになった。このモデルがあるからこそ,世界に今のようなモバイル・コンテンツの市場がある」と日本の取り組みを評価した。日本で以前から行われてきたようなスモール・スクリーン向けコンテンツを大型スクリーンに対しデプロイする考え方が今後一般化するとの予測を語った。