大幸薬品の副社長で医学博士の柴田高氏
大幸薬品の副社長で医学博士の柴田高氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2009年1月28日にITproが主催したITproカンファレンス「企業のためのパンデミック対策」において,大幸薬品 代表取締役副社長で医学博士の柴田高氏は,「社員を守る感染管理の考え方と『3層防衛』アプローチ」と題した講演をした。新型インフルエンザの現況や,感染のメカニズム,予想される脅威を述べたうえで,パンデミック(感染爆発)の危機と,同氏が考える防衛手法を語った。

インフルエンザの三つのカテゴリ

 まず柴田氏は,新型インフルエンザのとらえ方には,国や立場などによって「温度差がある」としたうえで,人に感染する可能性のあるインフルエンザを,以下のの三つのカテゴリにまとめた。(1)人に感染する季節型のインフルエンザ,(2)人に感染する新型のインフルエンザ,(3)鳥インフルエンザ---である。

 (1)の季節性のインフルエンザは,毎年流行しているよくあるインフルエンザ。しばしば“マイナーチェンジ”していて,毎年ワクチンを少しずつ変えて対処している。(2)の新型インフルエンザは,まだ免疫を持っている人が少なく,それゆえ大流行するもの。「例えていうなら(インフルエンザの)フルモデルチェンジ。車でならクラウンがセルシオになったとか」(柴田氏)。そして(3)の鳥インフルエンザは,(2)の元となるもの。「今後どのような新型インフルエンザが来るのかを知りたければ,鳥インフルエンザを調べるのが早い」(同氏)。

 昨今よく話題になる「H5N1」型は遺伝子変異で(3)から人型に変わりつつあるインフルエンザで,「強毒型」の可能性が高い。過去の新型インフルエンザ・ウイルスは弱毒型で,ウイルスが増える個所が呼吸器に限局していた。一方「強毒型」ではウイルスは「体のあちこちで増える」(同氏)。このため,重症患者と高い致死率を示すことが想定される。

40歳以下の若年層が危ない

 続いて柴田氏は,話題をインフルエンザ感染の特性に移した。すべての年齢層において発症,死亡者が発生すると考えられるが,ここで柴田氏が強調したのが,高年齢層と比較して39歳までの若年層は発症,死亡する確率が高くなること。「ヒトH5N1ウイルス感染例の年齢分布と予後」として,39歳までの若年層と40歳以上で発症,死亡者数に数倍の開きがあるデータを提示した。同氏はこの差の原因が,若い人の方が免疫の攻撃力が強く,正常組織まで障害し重症化する点や,高年齢層に比べて外出機会が多い点,40年前に流行したH2N2亜型との交差免疫などにある可能性を指摘した。

 さらに,H5N1型が新型インフルエンザ・ウイルスに変わるとして,パンデミックが起こるとしたら,誰もが免疫を持たないため「地球上の生きている人は全員が感染する」(同氏)と予測した。ゆえに経営者にとって新型インフルエンザのパンデミックは「社員およびその家族の生命にかかわる最大のリスク要因」であるとした。