写真●講演する富士ゼロックス 総務部 リスク&エシックスマネジメントグループ長の中島稔氏
写真●講演する富士ゼロックス 総務部 リスク&エシックスマネジメントグループ長の中島稔氏
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 「当社のリスク・マネジメントにおいて,“新型インフルエンザ”は“大規模地震”と並ぶ重要テーマだ」---。2009年1月28日,企業のパンデミック対策について考えるITproビジネス・カンファレンスに富士ゼロックス 総務部 リスク&エシックスマネジメントグループ長の中島稔氏(写真)が登壇。同社の新型インフルエンザ対策の基本方針を説明した。

 富士ゼロックスの新型インフルエンザ対策について,中島氏は「行政の動きを重要視している」と説明する。同社の新型インフルエンザ対策案は,国や行政が策定したガイドラインをベースに作られている。特に,海外で新型インフルエンザ・パンデミックが発生した場合の社内対策は「政府の水際対策が前提になる」(中島氏)。

 行政のガイドラインに従いつつ,事業を継続するには困難が伴う。中島氏は,政府の水際対策の課題である“帰国を希望する在外邦人を速やかに帰国させること”について,「家族はともかく海外駐在の社員本人を帰国させることについては現在進行形で議論している」と述べた。しかし,フェーズ6(ヒトからヒトへの感染が世界で拡大する状況)のパンデミックが発生した場合,「事態の鎮静化に要する期間は1年~2年に及ぶという専門家もいる。これは通常のBCP(事業継続計画)で対応できる範囲ではない」(中島氏)。同社は,パンデミック・フェーズに応じて企業活動を自粛するほか,行政からの要請や指導があれば速やかに活動を休止する方針だ。「BCPも大事だが,社会の一員として企業責任を果たし,人の安全を最優先するのが当社の基本方針だ」(中島氏)。

 新型インフルエンザ対策の社内方針を全従業員に展開するために,同社は2008年末,社員向けに「パンデミック対応ガイド」を配布した。また2008年夏には,国内の従業員全員にマスクと消毒液の「新型インフルエンザ対策セット」を配布したという。これは,パンデミック発生時に従業員への感染を予防するほか,新型インフルエンザに対する社員の意識を高める狙いもある。同社は今後,海外の従業員に対しても新型インフルエンザ対策セットを配布する予定だ。