ファイバーオプティクスEXPOの基調講演に登壇した富士通研究所の村野社長
ファイバーオプティクスEXPOの基調講演に登壇した富士通研究所の村野社長
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 「IT機器自体の環境負荷低減の効果は限定的。ITを活用した負荷低減にこそ大きな効果が見込める」。富士通研究所の村野和雄 代表取締役社長は2009年1月22日,ファイバーオプティクスEXPO 2009の基調講演に登壇。「次世代ネットワークに向けた富士通の将来ビジョン」と題して,環境問題解決への寄与を中心に通信ネットワーク周りの富士通および富士通研究所の取り組みを紹介した。

 富士通は,2007年~2010年の4年間で「ICTの活用で700万トンのCO2削減」をコミットメントとして掲げている。内訳は,ICT機器自体の効率化によるもの(Of ICT)が80万トン,ICTを活用したもの(By ICT)が620万トンである。全体の9割近くがBy ICTによる効果ということになる。エネルギーの利用効率の改善や生産消費の効率化,人・物の移動の効率化,環境計測・環境予測といった分野でICTの活用を勧めることにより,CO2排出の抑制に貢献できるとした。

 その上で,富士通研究所として取り組んでいる,デバイスやネットワーク,データセンターなどの各分野でCO2排出量削減につながる技術のいくつかを紹介した。

 例えばデータセンターでは,光ファイバを利用した温度測定技術がある。これは,温度によって光ラマン散乱光の強度が変化する特性を活用するもので,1本の光ファイバで1万箇所(光ファイバ長が10kmの場合)の温度を同時に測定できる。この測定で取得した温度分布を活用して,データセンターの空調を最適化する。熱電対式温度センサーなどを用いる従来の方法に比べて,高精度かつ安価に実現できるのだという。この技術は,2008年4月に発表されたものだ(発表資料)。

 通信トラフィックの急増に消費電力を増やさずに対応する技術としては,波長多重や波長スイッチなど光通信技術を活用する機器コンセプト「バーチャル・ルータ」と,それを実現する製品群やプロトタイプを紹介した。

 このほか,広域ネットワークが実現する「クラウド・コンピューティング」に関する富士通の取り組み,映像伝送サービスとして「IPTV」の現状,その要素技術となる富士通研究所の開発品を解説した。