写真1●日本総合研究所の新保 豊 理事・主席研究員
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写真2●アルバリオンのウージー・ブレイア ブロードバンドモバイル事業部プレジデント
写真2●アルバリオンのウージー・ブレイア ブロードバンドモバイル事業部プレジデント
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写真3●インテルの菊池明弘 事業開発本部 WiMAX事業開発推進部長
写真3●インテルの菊池明弘 事業開発本部 WiMAX事業開発推進部長
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写真4●LTEのWiMAXのネットワークの違い
写真4●LTEのWiMAXのネットワークの違い
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 無線関連の展示イベント「無線アクセスネットワーク2009」の特別講演が2009年1月21日に開催され,業界関係者がWiMAXに関しての最新動向を示した。2009年2月にはUQコミュニケーションズが国内でWiMAXの試験サービスを開始する予定になっているが,第3世代携帯電話(3G)のデータ通信サービスと競合するという懸念もある。3人の関係者が,WiMAXの可能性と将来展望を示した。

 日本総合研究所の新保 豊 理事・主席研究員(写真1)は,無線LANが登場してから約5年で普及したことを挙げ「WiMAXも5年ほどで普及すると見ている」という。

 無線LANとは異なり,WiMAXの普及には事業者によるインフラ投資が必要となるが,米国のオバマ政権に倣って,日本でもITインフラに対する公共事業投資が増える可能性もあるという。都市部だけでなく,地方における地域WiMAXのインフラ投資も普及を後押しするという見方もある。

 WiMAXをはじめITインフラ構築の行く末については,国内の状況を見るだけでなく,米国におけるIT関連政策や,米国の日本への要望の内容を把握して適切な投資先を見極める必要があるという考えを,新保氏は述べた。

 続いて無線機器メーカーであるイスラエルのアルバリオンのウージー・ブレイア ブロードバンドモバイル事業部プレジデント(写真2)が同社のWiMAX用機器について説明した。同氏は世界中でHSPAによる携帯電話のユーザーが5600万人に到達するという統計値を紹介し,「HSPAの広がりは,むしろWiMAXの啓蒙活動をしているようなもの。ユーザーは通信速度や通信品質に優れる代替技術を求めるようになる」と説明。3G携帯電話のデータ通信よりもWiMAXが高速であることを強調した。

 アルバリオンの新型の基地局については,MIMOやビームフォーミングなどの技術を改良してカバー範囲を広げたという。さらに基地局ごとでユーザーのアクセス管理を分散できる仕組みとなっており,基地局全体を統括で管理するサーバーが不要となるため,そのコストも削減できる。米国オクラホマに導入する場合の試算では,同じ範囲をカバーするために従来型と比べて基地局の数を347から134に削減。700万ドルのコストを削減できたと説明した。

 最後にWiMAXフォーラム日本オフィスの副代表でもあるインテルの菊池明弘 事業開発本部 WiMAX事業開発推進部長(写真3)がWiMAXの今後の見通しを説明した。携帯電話の通信と比べて「HSDPAで最大7.2Mビット/秒だが,モバイルWMAXでは10数Mビット/秒。さらに将来的には40Mビット/秒になる」と説明。WiMAXはより高速に通信したいというユーザーの要望に応えられるとした。

 技術的な面を見ると,OFDM(直交周波数分割多重)とMIMOを使うという点では,WiMAXと携帯電話の次世代規格LTEは共通している。ただ,WiMAXのほうが実用化の時期が早いことから,「将来のトレンドを先取りしており,時間的なアドバンテージがある」と菊地氏はいう。

 バックエンドのネットワーク構成については,携帯電話のシステムを引き継ぐLTEと比べるとWiMAXのネットワークはシンプルであるとして,この違いを菊地氏は「テレコム対インターネットのネットワーク構成」と表現した。WiMAXのほうが,簡単にネットワークを構成できるためコスト面で有利だという(写真4)。

 想定されているWiMAXの利用例としては,当初はパソコン用のUSBアダプターやデータ・カードが登場するが,その後はWiMAXの機能を内蔵するパソコンやMIDが登場するという。将来的にはポータブルゲーム機や小型のカーナビ,自販機,ガスメーター,固定用のテレビカメラといった用途も想定されるという。