写真1●夏野 剛 慶応義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授
写真1●夏野 剛 慶応義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授
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写真2●KLabの真田哲弥 代表取締役社長兼CEO(左),ザッパラスの杉山全功 代表取締役会長兼社長(中央)と夏野氏が座談会
写真2●KLabの真田哲弥 代表取締役社長兼CEO(左),ザッパラスの杉山全功 代表取締役会長兼社長(中央)と夏野氏が座談会
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 モバイル業界の若手社員や起業家が集まる交流会「体育会系モバイル部」が2009年1月20日,東京・六本木で開催された。この交流会は,5年前の第1回以来,今回で第20回目の開催となる。NTTドコモのiモードが登場した1999年2月から丸10年とモバイル業界にとって節目の時期と重なったこともあり,今回を記念イベントと位置づけた。第20回目のゲストは,かつてNTTドコモでiモードを立ち上げた夏野 剛 慶応義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授など。参加人数は過去最高の約800人に達した。講演が始まると,会場は参加者の熱気につつまれ,真冬にも関わらず冷房の電源を入れるほどだった。

 会場内のステージに登壇した夏野氏(写真1)は,NTTドコモから退社して半年が経過して,携帯電話市場が落ち込んでいることに懸念を示した。「NTTドコモは会社を立ち上げてから常にビジネスを拡大し,猛進してきた。それが去年を転機に一気に業界が縮小しようとしている」という。

 夏野氏によると,従来の古い考え方による携帯電話への取り組み方では,この厳しい状況を打開できないという。かつて取り組んできた仕事の中でも「いくら面白いビジネスや端末を作っても“オッサン”には分からない」というストレスを感じたという。夏野氏に言わせれば,小中学生の携帯電話の利用をやみくもに禁止しようという風潮などは言語道断。これからは,子供の頃から携帯電話に触れ,縦横無尽に使いこなしてきた新世代の若者に向けてサービスを開発しなければならないとする。

 だが,この不況は逆にチャンスと捉えられると夏野氏はいう。かつての携帯市場が伸び続けていた時期であれば,携帯電話の本質が分からない“オッサン”でも事業を手がけることができた。今後はそうはいかない。「将来性のある人,パワーのある人が前に出て行くべき。逆にパワーのない人は退いてもらう」と,不況を機に業界の浄化を進めるべきという考えを示した。

 時期が来れば,自らも何か大きなことを思う存分やりたいと夏野氏は決意表明。会場の若手には,自分を信じて「新しい未来を作って欲しい」と呼びかけた。

公演後の座談会にも参加して意見を披露

 講演のあとは,携帯向けソリューション開発を手がけるKLabの真田哲弥 代表取締役社長兼CEO,モバイル・コンテンツ事業を運営するザッパラスの杉山全功 代表取締役会長兼社長とともに,夏野氏は座談会に突入(写真2)。業界の内輪ネタも交えながら,さまざまな話題で会場を盛り上げた。例えば,「今後注目の技術は?」という題目では夏野氏がAndroid端末,真田氏がiPhoneのApp Storeのような課金システム,杉山氏がアニメなど日本のコンテンツの海外配信と,それぞれの意見を交わした。

 「5年~10年後のモバイル業界は?」という題目について夏野氏は,既存の端末では画面と操作性に制限があると述べ,ディスプレイとキーボードで革新的な技術が登場すれば,モバイルは大きく変化すると予測。5年~10年でモバイル業界は企業の合併統合が進むという展望を示した真田氏,杉山氏の意見に対して,夏野氏はユーザーの規模から見て「今のモバイル産業は小さすぎる。今の10倍は伸びる」と可能性を強調し,モバイル業界に取り組む参加者を鼓舞した。

 このほか,サイバードホールディングスの堀 主知ロバート 代表取締役社長兼グループCEO,グリーの田中良和 代表取締役社長,ライブドアの出澤剛 代表取締役社長も講演し,各社の取り組みを語った。これらの講演では,「いいサービスを作って,たくさんの人に知ってもらうことが大事」(堀サイバードホールディングス社長)などと,厳しい経済状況でも成長を目指すための戦略や意気込みを表した。