米Microsoftの関係者たちは2009年1月第2週に開催された家電展示会「2009 International Consumer Electronics Show(CES)」であいまいな発言を繰り返した。だが,同社はそれ以外の件でも話題の中心になっていた。同社は米Appleの「iPod」に負けを認めて「Zune」のハードウエア開発を打ち切り,Zune用ソフトウエアをスマートフォンや自社のゲーム機「Xbox」といった別のハードウエアに提供していくという,うわさが流れたのだ。

 同社はこれを否定した。同社が,現在はパソコン,Web,そしてZuneハードウエアに対応させているZuneプラットフォームの適用範囲を広げ,スマートフォンを含むほかの携帯用デバイスや「Xbox 360」にも提供しようと計画していることは事実だ。しかし,うわさと異なり,Zuneハードウエア事業から撤退することはない。同社Zuneマーケティング・ディレクタのAdam Sohn氏は「今後もハードウエア事業を続ける」と話した。

 このうわさは,同社CEOのSteve Ballmer氏がCESで行った基調講演が原因で生まれた。Ballmer氏はプレゼンテーションのなかで一度もZuneに言及しなかったのだ。また,壇上に現れた同社副社長のRobbie Bach氏は,2008年にZuneがそこそこ売れたと述べただけで,今後の事業改革については何も触れなかった。

 これに対し,報道メディアがすぐに疑問を呈した。Ballmer氏は,英Financial Times紙のインタビューに「現在メディア再生機能しか持たない携帯用メディア・プレーヤの市場は縮小しており,未来はAppleの『iPhone』や『iPod touch』といったより『汎用的な』デバイスの方が有望なことから,事実上Zuneモバイル・デバイスは撤退の準備段階にあるとみる」と答えた(関連記事:Windows 7に加えWindows MobileやZuneでも注目されたCES)。

 Ballmer氏は,Zuneベースの携帯電話機「Zune Phone」に関するうわさも否定した。ところが,Microsoftの関係者は筆者に「Zune Mobileは実際に計画されており,2009年に発表がある」としている。同社は自社製のZune Mobileをリリースし,Windows Mobileのライセンス取得メーカーにも同様のデバイス開発を許可するらしい(関連記事:2009年のスマートフォン市場でMicrosoftは存在感を示せるか)。

 いずれにしろ,MicrosoftがZuneハードウエア事業から撤退するといううわさは,そろそろ鎮めておく時期だ。同社のPaul Davidson氏はZune関連ブログに「われわれはしばらく前から,優れたエンタテインメント機能を様々な環境やデバイスにも提供していく,というZuneの戦略を話してきた。この戦略の中心には,常にソフトウエアとサービスを据えている。これは目新しい話ではない。このおかげで,現在Zuneプラットフォームの機能がパソコンとZuneデバイスで利用できるのだ。そして,以前から述べている通り,同じ機能を将来ほかのデバイスへ拡張していくことにもつながるだろう」と書いた(同氏のブログ投稿記事)。

 Davidson氏のブログ記事でキーワードとなる表現は,もちろん「拡張」である。Microsoftは,今後ZuneプラットフォームをZune以外のデバイスに拡張する計画なのだ。その一方で,Zuneブランドでメディア・プレーヤの製造と販売を続ける計画も捨てていない。