メインフレームをUNIX機に移行した日本酒類販売と,ベンダー3社
メインフレームをUNIX機に移行した日本酒類販売と,ベンダー3社
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MFAプログラムとその成果を報告する,韓国HP KoreaのWon Moo Kang氏
MFAプログラムとその成果を報告する,韓国HP KoreaのWon Moo Kang氏
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 日本ヒューレット・パッカード(HP)は2009年1月15日,メインフレームからUNIX機などへの移行をコンサルティングによって推進する活動「MFA(メインフレーム移行)プログラム」の成果を報告するプライベート・イベントを開催し,ユーザー企業による事例紹介などを実施した。韓国Samsung Cardは「年間維持コストを10分の1に削減した」例を,日本酒類販売は「TCO(所有総コスト)を30%削減した」例をそれぞれ報告した。

 MFAプログラムはメインフレームからUNIX機などへの移行コンサルティング体系で,米HPが全世界で展開している。UNIX機などへのリプレースによって,メインフレームと同等のサービス・レベルを維持しつつ,TCOを減らすことが可能になるとしている。

 同社が規定するメインフレーム移行は,その成熟度によって大きく4段階に分かれる。(1)メインフレームはそのままに,ストレージなどの周辺環境を整備する「Surround MF」。(2)COBOLで開発された業務アプリケーションをそのまま使い続け,ハードウエア・インフラをリプレースする「Modernize Infrastructure」。(3)COBOLアプリケーションをJavaなどに書き換える「Modernize Applications」。(4)現行における最新の運用管理を適用する「Adaptive Infrastructure」---である。

 このうち,3段階目のアプリケーション近代化以降に相当する事例として,COBOLをC言語に移行した韓国Samsung CardのLee Yeon Ha氏が自社事例を紹介した。1日3100万トランザクションのシステムを,メインフレームからUNIX機へ移行したもので,「可用性はメインフレームと同等のまま,年間のメンテナンス費用を10分の1に削減できた」(Lee氏)という。

COBOL資産を生かしたままTCOを3割削減

 2段階目のインフラ近代化に当たる国内事例としては,日本酒類販売に加えてSIベンダーやプラットフォーム・ベンダーなど3社がパネル討論を展開した。

 日本酒類販売の大西完治氏は処理性能の向上とともに,TCOを30%以上改善できたことを報告した。同社は6600本のCOBOLプログラム資産を生かしたまま,1年かけてOpen COBOLとUNIX機へとマイグレーションし,2008年4月に稼働させている。

 SIベンダーの立場からは東京システムハウスの清水真氏が,西暦2000年を境にユーザー企業のメインフレーム移行のスタンスががらりと変わったと指摘。2000年以前の企業はサポート期間切れなど周囲の状況から仕方なくメインフレームの運用を止めるケースが多かった。これに対し2000年以降は,コスト削減や開発の柔軟性確保などポジティブな意思を持って移行しているという。

 サーバー・ベンダーの立場からは,日本ヒューレット・パッカードの北元智史氏が参加。メインフレームが抱える問題点として,人材不足,コスト高,業務改善に追従するために必要な柔軟性の低さ,を指摘した。

 ミドルウエア・ベンダーの立場からは日本オラクルの縄田雅秀氏が,メインフレーム移行によって,ハードウエアの違いだけでなく,業務運用のやり方自体が効率化すると説明。メインフレーム時代の業務アプリケーションはデータ入力システムの様相を呈しており,入力するデータの作成作業が手作業になってしまっている,とした。