携帯電話や携帯機器の制御チップメーカーである米クアルコムは,2009年1月8日から米国ラスベガスで開催されている展示会「2009 International CES」の会場で,携帯端末向けのチップセット「Snapdragon」を搭載した試作端末を関係者向けに公開している。ネットブック型も開発しており,携帯電話の通信機能を持った新ジャンルの端末として普及を狙う。
SnapdragonはCPU,3Dグラフィックス,3G携帯電話のデータ通信のほか,無線LAN,Bluetooth,GPSなどの機能をまとめた携帯端末向けのチップセット。従来のチップセットである7000シリーズはAndroid端末の「T-Mobile G1」などに採用されたが,今回展示した8250チップセットではさらに解像度を高めるなど改良を加えた。
Androidが動作する試作機(写真1)やWindows Mobile端末(写真2)のほか,小型のノートパソコン型(写真3)も展示した。製品ジャンルとしては低価格ノートのネットブックに近いが「Snapdragonには3G携帯電話のデータ通信機能でどこでもネット接続できるという点がネットブック異なる」(ルイス・ピネダ CDMAテクノロジーズ マーケティング&プロダクトマネージメント シニアバイスプレジデント)と主張する。単なるノートパソコンの置き換えではなく,新ジャンルの創造を狙うとした。
今後はCPUをデュアルコア化し,動作周波数を従来の1GHzから1.5GHzに高めるなど,処理性能の向上を継続する。高性能化で「フルHDの映像も表示できる」(ピネダ シニアバイスプレジデント)という。
デュアルコア化したチップセットでは,携帯電話向け通信方式として同社が推進してきたCDMA2000方式に加え,下り最大28Mビット/秒のHSPA+に対応する。HSPA+を追加した理由を「いずれはLTEが次世代の標準になる。その前身の規格であるHSPA+に対応しておけば,将来の移行がしやすくなる」(アレックス・カトウジアン CDMAテクノロジース プロダクトマネジメント バイスプレジデント)と説明する。
複数の通信規格に対応することで,採用するメーカーや通信事業者の選択幅を広げるという狙いもある。複数の通信モードを実装するにはチップ内のモデム部分に機能を追加するだけで済むため,大幅な高コスト化にはならないという。
展示場所では,携帯端末の試作品のみならず,チップセット7000シリーズを搭載した小型デスクトップ機「Kayak」も展示していた(写真4)。発展途上国向けに開発したもので,有線のインターネット通信インフラが整備されていない場所において,3Gのデータ通信機能で接続することを想定している。OSにBREWを採用して,機能はWebブラウザーや簡単なゲーム程度に絞り込む。価格は200~300ドル程度を見込む。
公開当初,5段落目に「上り最大28Mビット/秒のHSPA+に対応する」との表現がありましたが,正しくは「下り最大28Mビット/秒」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2009/01/19 12:50]