Macworld 2009のエキスポ会場では,数多くのソフトウエア開発者が多岐にわたるiPhone用アプリケーションを展示していた。iPhoneの新たな可能性を感じさせる注目のアプリケーションをいくつか紹介していこう。なお,ここで紹介したアプリは海外向けで日本のApp Storeでは販売されていないものもある。

写真1●複数の連絡先を管理できる「Pinger」
写真1●複数の連絡先を管理できる「Pinger」
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 iPhone上で複数のSNSやインスタント・メッセンジャーサービスを利用するようになると,人によってどの手段で連絡を取ればいいのか,混乱してしまうかもしれない。米ピンガーの「Pinger」は,こうした状況を改善するため,電話番号やメールアドレスのほか,Yahoo!やMSNといったインスタントメッセンジャーのIDやFacebookなどSNSサービスのIDをまとめて管理できる(写真1)。

 相手がこれらサービスのどの手段で連絡を取ってきても,まとめて通知を受け取れる。サービスごとに別のアプリを立ち上げる手間が減る。アプリの料金は無料だが,アドレス帳の中に広告が表示される。このほか,複数サービスの連絡先をまとめて管理するものでは米ビージャイブの「BeejiveIM」というアプリもあった。

iPhoneが音声メモ機にも楽器にも変身

写真2●音声メモとして記録できる「Note2Self 3.0」
写真2●音声メモとして記録できる「Note2Self 3.0」
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 米ウェブ・インフォメーション・ソリューションの「Note2Self 3.0」は自分の声を録音したうえで,iPhone内部に音声メモとして記録できるほか,メールで音声を転送できるアプリ(写真2)。何かアイデアを思いついたときのメモ用途に向くだろう。面白いのは音声をテキストデータ化するサービスも用意していること。料金は1分間につき約1ドル。アプリ自体の価格は1ドル99セントだ。

 米スリング・メディアは,同社のネットワーク機能付きHDDレコーダーからのストリーミング映像を受信できるiPhone用アプリを展示している(写真3)。従来はWindows Mobileなど別プラットフォームのアプリを公開していたが,iPhone向けも追加する。2009年3月ころまでにアップルの認証を受ける予定だという。価格は30ドル前後の見込み。

 米イリウム・ソフトウエアの「eWallet」はカード情報やネットサービスのID/パスワードを管理するアプリ(写真4)。個人情報を表示するにはパスワード入力が必要で,iPhone内では256ビットのAESで暗号化して保存する。「万が一,端末が盗まれても内部のデータを読まれる心配はない」(エレン・クロー ジェネラルマネージャー)という。価格は9ドル99セント。Windows版も用意しており,無線LAN経由でシンクロする機能も持っている。

写真3●HDDレコーダーからのストリーミング映像を受信できる米スリング・メディアのiPhone用アプリ
写真3●HDDレコーダーからのストリーミング映像を受信できる米スリング・メディアのiPhone用アプリ
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写真4●カード情報やID/パスワードを管理する「eWallet」
写真4●カード情報やID/パスワードを管理する「eWallet」
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 米スミュールはiPhoneのマイクに息を吹きかけることでオカリナの音が出せる「OCARINA」を紹介していた。ギターと合わせて数人で合奏するデモを見せており,注目を集めていた(写真5)。

 iPhone向けWebアプリの開発を効率化するツールとしては,米ウィジェット・プレスが「ModelBaker」を公開した(写真6)。ドラッグ・アンド・ドロップの操作で,データベースを利用して商品やユーザーの管理をするためのサイトが比較的簡単に作成できる。変数の種類,変数を格納するための入れ物(モデル),表示方法などを選択して「Build」ボタンを押すだけで,PC向けサイトのほか,iPhoneおよびAndroid向けのWebアプリ用データが作成できる。「まずは教育機関や中小企業での利用を期待している」(創立者のジョナサン・フリーマン氏)という。

写真5●オカリナの音が出せる「OCARINA」
写真5●オカリナの音が出せる「OCARINA」
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写真6●ドラッグ・アンド・ドロップの操作でiPhoneやAndroid向けのWebアプリが作成できる「ModelBaker」
写真6●ドラッグ・アンド・ドロップの操作でiPhoneやAndroid向けのWebアプリが作成できる「ModelBaker」
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日本のアプリ開発者も奮闘

 ここまでは,海外の企業を紹介してきたが,日本からサンフランシスコに乗り込んだ国内アプリ開発者も,米国市場に挑むべく,奮闘している。

写真7●ユビキタスエンターテインメントの展示ブース
写真7●ユビキタスエンターテインメントの展示ブース
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 2008年末には決起集会(関連記事)を開いて準備してきたように,1月7日(米国時間)には日本発アプリの発表会「Japanese iPhone Developer Summit」を開催し,海外メディアにアピールする。12人の開発者が登場し,ユビキタスエンターテインメントのメモ書きツール「ZeptoPad」,芸者の動きが楽しめるGClueの「Geisha」,サン電子の「Mahjong Solitaire」といった多彩なソフトを紹介するという。

 6日には,エキスポ会場に設置されたユビキタスエンターテインメントのブースで,予行演習も兼ねて数人の開発者がプレゼンテーションを展開した(写真7)。会場が閉じたあとは,近くの中華料理屋に移動し,店内で食事を取りつつ,順番にリハーサルを実施。英気を養うと同時に,7日の本番に向けて万全の体制を整えていた。

動画●レッド・ツェッペリンの「天国への階段」を演奏