厚生労働省は2009年6月に施行する改正薬事法において、省令案によって一部の一般医薬品のインターネット販売を規制する方針を固めた。これは2008年12月16日に内閣府に設置されている規制改革会議が提出した質問事項に厚生労働省が回答した内容から明らかになったもの(関連記事)。

 改正薬事法では薬の成分が持つリスクに応じて一般医薬品を第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品と三つに分類している。厚生労働省はこのうち、インターネットを含む通信販売では、リスクが低いとされる第三類のみ販売可能とする省令案を9月17日に発表。ケンコーコムや楽天、ヤフーなどのネット販売事業者がネット販売規制に対して相次いで反発。厚生労働省は10月16日にパブリックコメント(意見募集)を締め切っており、公布される省令でネット販売規制が変更されるかどうかに注目が集まっていた。

 厚生労働省は規制改革会議とのやり取りの中で、「パブリックコメントで提示している案をベースに速やかに公布したい」としており、ネット販売規制が残ったまま2009年早々にも省令が公布されることとなった。

 規制改革会議は質問事項の中で、インターネットで一般医薬品を購入し、副作用を発症した30代女性の実例を基に「副作用被害が発生した原因はインターネットを通じた販売方法に起因するか」と質問。これに対し、厚生労働省は副作用被害が販売方法によるものか否かを判断するのは困難と回答。一方で、医薬品による健康被害の恐れに対し、未然防止の観点から対面販売の原則を満たさないネット販売では、国民に安全と安心を提供することは困難としている。

 また、ネット販売規制による消費者の影響に関する質問に対し、厚生労働省は「店舗まで足を運べない消費者が仮に高齢者や障害者、妊婦、育児中の方であれば、なおさら誤った医薬品の使用によって重大な副作用被害の発生につながる恐れがある」と指摘。ネット販売ではなく、医療機関への受診や家族による代理購入、配置販売サービスの利用こそ適切な情報提供の下で購入できる手段と回答した。

 一方、省令案でネット販売を規制するのは法の授権範囲を超えるという指摘に対しては、「既に2004年5月に開催された厚生科学審議会の部会で審議されており、その報告書に明記された後、改正法案が作成され、国会での法案審議が行われている」と反論。今回の省令案の内容は、法律による委任の範囲内であると考えていると回答している。

 改正薬事法の施行は2009年6月。省令が公布されると、ネット販売事業者は第三類医薬品を除いた一般医薬品をたとえ薬剤師でも販売できなくなる。ただし、規制改革会議への回答の中で厚生労働省は「今後、インターネット販売の団体などから、安全確保のための具体的な提案が示された場合には、幅広い関係者で議論することを検討したい」とネット販売に道を残しており、ネット販売事業者は「公布される省令を見てから対応を決めたい」(ケンコーコム)としている。