写真1 企業・団体の参加者が新型インフルへの対処を演習した(東京・代々木)
写真1 企業・団体の参加者が新型インフルへの対処を演習した(東京・代々木)
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写真2 感染や社会の状況を条件として与える
写真2 感染や社会の状況を条件として与える
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写真3 各事業の危機管理責任者として議論を進める
写真3 各事業の危機管理責任者として議論を進める
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写真4 BCAOの細坪事務局長
写真4 BCAOの細坪事務局長
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 事業継続推進機構(BCAO)は2008年12月17日、新型インフルエンザの蔓延に対して企業がどのように対処するべきか、体験型のシミュレーションを実施した(写真1)。BCAOは企業や団体、企業や団体内の個人などが参加している特定非営利活動法人(NPO)で、事業継続計画(BCP)の策定や実行についての情報交換、普及啓蒙を主目的としている。

 新型インフルは感染を避けるため、社員間の接触を極力避ける必要がある。その一方で企業によっては重要業務に絞って事業を継続することが求められている。今回の新型インフルのシミュレーションにはBCAOの会員約100人が参加。約10人で東京・丸の内を本社とする企業体を構成し、それぞれ参加者が各事業の危機管理責任者の対策会議という設定で進めた。約3時間で、新型インフルの発生、4日後、11日後、1カ月後の四つの状況を想定した条件が与えられていった。

 例えば、11日後では社内の感染者が200人、交通機関の稼働は2分の1といった条件が提示される(写真2)。こうして感染や社会インフラの状況が目まぐるしく変わる条件下で、メンバー間で議論と調整を行う(写真3)。この過程では、大きな模造紙に、「するべきこと」「必要な情報」「課題・問題」「政府・自治体に望むこと」をそれぞれ異なる色の付箋紙に書いて張りながら演習する。

 演習後の参加者からは「どのタイミングでどの事業を縮退させるのか、再開させるのか判断が難しい」「やはり事前の計画がないと対応が後手に回る」「社員の感染が疑われている段階で、結果が判明するまでの対処が悩ましい」「事業の財務状況の管理や、自宅待機社員の業務や給与体系をどのように考えるべきか」「企業のトップが迅速に判断できるか、国がどこまで責任を持って支援してくれるのか不安になった」といった声が聞かれた。

 企画をしたBCAOの細坪信二事務局長は「今回のシミュレーションで出てきた課題は、非常時に社内で必ず出てくること。それをふまえて対策を立てていただきたい。もちろん1企業での対応は難しい面もあり、企業間や関係機関との連携も重要だ」と締めくくった(写真4)。

 細坪氏はリスクマネジメントのNPO法人危機管理対策機構(CMPO)の事務局長も務めており、今回のシミュレーションはCMPOのノウハウで実施した。CMPOとして個別企業のトレーニングも引き受けている。