写真1:NHKオンデマンドの配信システムの概要
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写真2:NHK内にある「オンデマンド運用室」。トランスコード用の設備などを備えている
写真2:NHK内にある「オンデマンド運用室」。トランスコード用の設備などを備えている
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 NHKは2008年12月16日,NHKオンデマンド(NOD)用配信動画のトランスコード(動画形式変換)作業を行っている「オンデマンド運用室」を報道機関に公開し,運用状況を説明した。12月1日のサービス開始から約2週間が経過した12月15日時点のパソコン向けサービスの会員登録数は1万1000人で,このうち実際にコンテンツを購入した会員が約半数,コンテンツ購入会員の約3分の1が「見逃し見放題パック」の加入者だという。

 見逃し番組サービスで提供している定時番組は93番組(通常番組が88番組,ニュース番組が5番組)であり,単発の番組なども含めると12月の第3週には122番組を見逃し番組サービスで提供する。1日の平均で17番組となり,サービス開始時に示していた計画(1日平均10~15番組)を上回っているという。

 見逃し番組サービスでは「その時 歴史が動いた」や「プロフェッショナル」などのシリーズ番組に人気があるほか,「クローズアップ現代」や「経済最前線」などの番組も見られているという。特選ライブラリーサービスも「大河ドラマ」などのシリーズ番組が人気のほか,昔の音楽番組など懐かしさを誘う番組に人気が集まっている。

 これまで利用者から寄せられた問い合わせは,「パソコン向けサービスをWindows以外のOSでも利用できるようにしてほしい」というものと,「Windows Media Playerのアップデートがうまくできず,サービスを利用できない」という2点が多いという。最新のコンテンツ保護技術を使っているため,Widows Media Playerの更新やセキュリティーパッチを適用する必要があり,利用者の環境によってはアップデートを完了するまでに3回パソコンを再起動する必要があるのが原因である。パソコン向けサービスに登録した会員の約半数が番組の購入まで至っていないが,「年末年始の休暇中に環境を整えてもらえれば,さらに利用が増えるのではないか」(NHK)とみている。

番組を録画してトランスコード,放送時間の3倍かけてH.264圧縮

 一方,NODのNHKの施設(写真1)では,配信用動画ファイルを作成するところまでを行い,実際の配信は外部の配信業者の設備で行っている。配信用の動画ファイルを作成するにはまず,収録済みの番組はテープから,生放送の番組は番組送出後の非圧縮データを放送と同時に録画して,元の動画データを作成する。続いてこのデータから配信する部分を抜き出し,配信用のスーパーを付けたり,権利処理ができなかったシーンにフタをつけたりする(映像を見られないよう静止画に差し替える)作業を行い,トランスコードする。「J:COMオンデマンド」や「ひかりTV」などプラットフォーム別にトランスコードを行い,管理用のメタデータと一緒に各社の配信サーバーに専用線で配信している。

 トランスコード作業では,パソコン向けのWindows Media形式2種類,J:COMオンデマンド向けのMPEG-2(14.5Mb/s)形式,ひかりTVとアクトビラ向けのH.264(8Mb/s)形式と4種類の配信データを並行してトランスコードしている。このうちH.264方式のトランスコードに最も時間がかかり,番組再生時間のおよそ3倍の時間かかるという。NHKは24時間体制でトランスコードを行うことで,翌日の見逃し番組サービスに間に合わせている状況だ(写真2)。このためNHKのリソースや費用対効果を考慮し,新たにNODの提供について交渉している事業者には,先行する事業者が採用している動画圧縮方式のいずれかを採用してくれるように呼びかけているという。