文化庁・文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」は2008年12月16日に第5回会合を開催し,私的録音・録画補償金制度の見直しに関する議論を今回で終了することを決めた。小委員会の事務局を務める文化庁長官官房著作権課が,補償金制度に関する議論を2008年度で終了することを盛り込んだ報告書案を,同日の会合に提出した。小委員会で約3年にわたり補償金制度の見直しに向けた検討を進めた結果,現行の補償金制度が抱える問題の解決策を模索するための論点が整理されたと判断した。これに対して委員から異論が出なかったため,小委員会の約3年にわたる議論に終止符が打たれることになった。

 ただし,小委員会の親会である文化審議会著作権分科会は,引き続き補償金問題の見直しについての検討を進める。さらに文化庁は,権利者団体やメーカーなどの関係者が意見交換できる場を新たに設ける意向だ。例えば懇談会を設置して,関係者間の利害調整を行うことを検討している。2009年度から著作権分科会や懇談会でどのように議論を進めるかは,「これから決める」(川瀬真・文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長)という。

 小委員会の主査を務める中山信弘弁護士は今回の最終会合で,「補償金の見直しについて関係者の合意が得られなかったことに,主査として責任を感じている」としたうえで,「補償金問題は著作権法が直面しているデジタル問題を象徴するものだ。著作権法はデジタル時代にどう対応するべきかという非常に大きな課題を与えられている」と述べた。一方,文化庁の川瀬室長は会合終了後に報道陣に対して,「小委員会での議論によって関係者の意見の隔たりが狭まった部分もある」として,3年にわたる議論がある程度の成果を上げたという見解を示した。