写真●NTT情報流通基盤総合研究所 研究主任の折口壮志氏
写真●NTT情報流通基盤総合研究所 研究主任の折口壮志氏
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 2008年12月12日,東京ビッグサイトで開催されたエコデザイン2008 ジャパンシンポジウムで,NTT情報流通基盤総合研究所 研究主任の折口壮志氏が登壇し,ITを活用したサービサイジング・ビジネスによるCO2排出量削減の可能性について講演した(写真)。

 サービサイジング・ビジネスとは,製品の機能をサービス化して提供することをいう。今回,折口氏が試算対象としたのは,カーシェアリング,音楽配信,電子ニュース,電子図書の4種類のサービサイジング・ビジネス。それぞれ,乗用車,CD(コンパクトディスク),新聞,書籍という製品の機能をサービス化し,製造工程(一部は配送工程も含む)を不要にすることで,どれだけのCO2排出量を削減できるかを求めた。

 例えばカーシェアリングでは,国内における乗用車と軽自動車の登録台数6860万台(2006年3月の実績)のうち,福祉車両など削減が難しい自動車を除いた6492万台について,複数人による共同利用の推進により,どれくらいCO2排出量を削減できるかについて検討した。

 「乗用車1台を共有できる最大人数は8.8人という想定で試算した」と,折口氏は説明する。これは,関西文化学術研究都市推進機構が2003年に実施した「けいはんなITS社会実験」の結果に基づいている。これにより,6492台を8.8人で割った数,すなわち738万台のカーシェアリング用の乗用車があれば,6492万台という乗用車の国内需要を代替できることになる。「削減できた乗用車の台数に,製造原単位を掛け合わせれば,最大4420万トンのCO2排出量削減が可能であることがわかった」と折口氏は試算結果を示す。

 同様にして他のサービサイジング・ビジネスについても検討を進めたところ,音楽配信で25万トン,電子ニュースで25万トン,電子図書で2800万トンのCO2排出量削減の可能性があるとの結果が得られた。

 「カーシェアリングと電子図書で特にCO2排出量削減の可能性が高く,有効なサービサイジング・ビジネスであることがわかった。ただし,これらが製品の機能を完全に代替できるかと言えば必ずしもそうではない。利用者の満足度を考慮したうえでの環境影響の評価手法をさらに検討していく」と,最後に折口氏は講演を総括した。