デスクトップ上などで動作する小型ソフトウエア「ウィジェット」開発の米大手RockYouが日本市場に参入することが,2008年12月12日までにわかった。ソフトバンクと合弁会社を設立。2009年1月から営業活動を開始すると見られる。

 米国ではウィジェット専用の広告配信ネットワークが成立しており,新たなネット広告手法として注目を集めている。米大手が参入することで,国内のネット広告関連事業者にも影響を与えそうだ。

 11月28日に設立したのは「ロックユーアジア」。東京都港区に本社事務所を置き,ウィジェットの開発および提供と広告配信ネットワークを展開する。資本金は5000万円になる模様で,RockYouとソフトバンクが折半する見通し。ソフトバンク広報は「資本金と営業開始日についてはまだ決まっていない」としている。

 社長には孫正義・ソフトバンク社長の弟で,オンライン・ゲーム運営のガンホー・オンライン・エンターテイメント会長の孫泰蔵氏が就任する。RockYou,ソフトバンクの双方から役員を派遣し,役員を含めた従業員数は10人弱になると見られる。

 RockYouは2005年11月設立。米Facebookなど英語圏の大手ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS),Xiaoneiなど中国語圏の大手SNS向けにウィジェットを提供する。月間利用者数は1億800万人,月間閲覧数は20億ページビューとなる。現時点で米ベンチャー・キャピタルのSequoia CapitalやDoll Capital Managementなどから約70億円の資金調達を実施している(関連記事)。

国内大手SNSと組んで広告配信ネットワークを構築へ

 収益の柱はウィジェットに配信する広告事業。ある俳優の好きな出演作品を選ぶなど多人数参加型簡易ゲームと広告を組み合わせ,広告一配信あたりの視聴者数を増やす様々な仕かけを盛り込んだ広告商品が主力。費用対効果の高い検索エンジン連動型広告などと比べ,SNS上での広告波及効果がさらに高まるとして提案している。

 自社開発のウィジェットに配信する広告売り上げのほか,ウィジェット専用の広告配信ネットワークから得る広告配信代理業務による売り上げがある。広告配信ネットワークは現在,Facebook向けに提供しており,Facebook上のウィジェットの8割程度に広告を配信していると見られる。

 日本は本格的なアジア展開を視野に,3カ国語目の市場として展開する。まずは国内の大手SNSと組んでウィジェット開発および広告配信ネットワークの構築を急ぐ。すでに,ミクシィやグリーなどの大手SNSとの話し合いを始めている模様だ。次の段階として,米RockYouが手がけるアジア市場関連事業をロックユーアジアに移管。米RockYouはウィジェット向け関連アイテムの有料販売を,アジア市場を軸に展開し,広告事業に次ぐ収益の柱にすることを狙っている。

 ソフトバンクは携帯電話事業子会社のソフトバンクモバイルを軸に,携帯電話向けにウィジェット事業を2008年11月28日から展開している。また,ソフトバンクはRockYouに韓国最大手の携帯電話事業者SKテレコムと共同で約17億円,ソフトバンク単独でXiaoneiに102億円を投資している。当面はロックユーアジアが手がけるウィジェット事業がパソコン向け,ソフトバンクモバイルが携帯電話向けと切り離して展開するが,将来的な協業体制も視野に入れているようだ。

 アジア市場に向けたウィジェット事業については「パソコン,モバイルともにウィジェット関連事業の展開においてRockYouとXiaoneiとの事業シナジーを最大限活用していきたい」(後藤芳光・ソフトバンク財務部長兼関連事業室長)と共同展開する可能性を示唆している。