写真●Ji2の藤澤哲雄代表取締役社長
写真●Ji2の藤澤哲雄代表取締役社長
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 シマンテックは2008年12月8日,セキュリティ製品や端末調査サービスを展開するJi2と協業して,フォレンジック技術を使った訴訟支援サービス「e-Discoveryコンサルティング」を提供すると発表した。米国に支社を持つ日系企業を対象に,米国で訴訟が起こった場合に必要となる電子的な証拠の開示(E-Discovery)を支援する。参考価格は1000万円から。

 米国に支社を置く企業は,特許侵害やPL法関連で他社から告訴を受けた場合,アメリカ連邦民事訴訟規則により,訴訟に関係する電子的な証拠の開示(E-Discovery)を要求される。開示の対象となるデータは,電子メール,インスタント・メッセージ,チャット記録,Microsoft Officeで作成された文書データなど広範囲に及ぶ。そのため,訴訟1件当たりのE-Discovery対応費用は「平均1.8億円にもなる」(Ji2の藤澤哲雄代表取締役社長,写真)という。米国では訴訟は日常茶飯事で,米国に進出している大手日系企業は「常に20程度の訴訟を抱えており,訴訟費用の増大が問題になっている」(藤澤氏)。訴訟の90%は和解に持ち込まれる。有利な和解条件を獲得するためには,いかに迅速に証拠となる電子情報を開示できるかがポイントになるという。

 今回シマンテックとJi2が提供する訴訟支援サービスは,訴訟に必要なデータ収集にかかる時間を大幅に短縮し,E-Discovery対応費用をおよそ30%削減する。サービスの内容は,訴訟対応計画などのコンサルティングと実際のデータ収集。コンサルティングをシマンテックのコンサルティング・サービス部門が担当し,データ収集をJi2が行う。データの収集には,「国内では初めて」(藤澤氏)となるネットワーク経由でのフォレンジック技術を使う。

 Ji2のフォレンジック技術では,専用ツールを対象のパソコン/サーバーにインストールし,基幹ネットワーク経由で削除された電子メールや文書データ,チャットやインターネット接続の履歴などのデータを収集する。OSのリフォーマット後などでも「データが上書きされない限りは復元できる」(藤澤氏)という。大きな特徴は,システムを停止することなく,通常稼働中のパソコン/サーバーからデータ収集ができる点だ。従来のフォレンジックでは,対象のパソコン/サーバーのHDDを抜き取り,デュプリケータを使って全データをコピーするため,調査の際はシステムを停止する必要があった。作業時間は夜間や休日に限定されていたが,Ji2のフォレンジック技術を使うと業務時間内の作業が可能になり,調査期間が短縮する。

 さらに,これまでのフォレンジックではHDDの全データをコピーして調査していたため,扱うデータ量が膨大だったが,Ji2のフォレンジック技術を使ったデータ収集では,調査対象パソコン/サーバー内の必要なデータだけを取り出すことが可能だ。同サービスでは,データの収集作業の前に,シマンテックのコンサルタント・サービス部門が,訴訟に必要なデータの属性や,データの収集が必要な期間を分析する。分析結果に基づき,必要なデータのみを収集することで調査にかかる時間,コストを削減する。

 シマンテックとJi2は米国の訴訟支援以外にも,企業の情報漏洩箇所の特定や,監査の虚偽報告調査などの個別案件に,ネットワーク経由のフォレンジック技術を使った調査サービス「コンピューターフォレンジックコンサルティング」を提供する。コンピューターフォレンジックコンサルティングの参考価格は100万円から。