写真1●日立製作所 環境本部 環境推進センタ 主任技師の市川芳明氏
写真1●日立製作所 環境本部 環境推進センタ 主管技師の市川芳明氏
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 「エコデザインに関する環境規制であるEuP(Directive on Eco-Design of Energy-using Products)が2009年2月から本格始動する。PCやモニター,複写機などは当初の規制対象製品に含まれており,メーカーは対応を急がなければ市場からの退場を迫られることになる」──。

 2008年12月8日,東京・永田町で開催された日経BP環境経営フォーラムの研究会で,日立製作所 環境本部 環境推進センタ 主管技師の市川芳明氏が講演し,EU発の新たな環境規制が日本企業に与える影響について解説した(写真1)。

 EuPは環境配慮設計に関するEU指令。2005年7月6日に欧州議会で「枠組み指令」が採択され,8月11日に発効した。2009年2月にはいよいよ具体的な規制内容である「実施措置」が決まる。

 EuPはCEマークの新たな適合条件になることが正式に決まっている。CEマークとは所定のEU指令への適合証であり,取得すればEU加盟国の個別規制に左右されることなく,EU域内で自由に取り引きできる。EUで製品を販売・流通する企業にとってCEマークの取得は必須事項と言える。

図1●EuP指令への対応可否が製品の市場競争力に直結する
図1●EuP指令への対応可否が製品の市場競争力に直結する
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 「これまでCEマークと言えば,安全性や電磁波の規制への適合が主だった。それらに加え,環境規制であるEuPが適合条件になったのは画期的なこと」と市川氏は話し,EuPの重要性を訴える(図1)。かつて特定有害物質の使用禁止に関するEU指令であるRoHSが国際標準となり,多くの日本企業がその対応に追われることになった例を引き,「EuPで同じ轍を踏んではならない」(同氏)というわけだ。

 EuPでは,原材料の調達から製造,流通,使用,廃棄に至るまでの製品のライフサイクル全体について,環境負荷を定量的に評価した「エコロジカル・プロファイル」の作成を義務付ける。また製品ごとに設定された機能/性能の基準値(エネルギー消費量など)をクリアすることが求められる。さらに環境配慮設計を実施するプロセス(マネジメントシステム)も評価の対象となる。

 2009年に始動する「実施措置」の対象となる製品は,ボイラー,給湯装置,パソコンとモニター,画像装置(ファックス,複写機,スキャナーなど),テレビ,充電器と外部電源,オフィス照明など14品目である。さらに今後,空調・ヒートポンプやネットワーク機器など数十品目が候補に挙がっている。

 蛍光灯型電球で世界トップシェアを持つフィリップスは,欧米各国で積極的にロビー活動を行ない,白熱電球を市場から駆逐する(2012年以降)ことに成功した。「環境規制はまちがいなく有力な市場競争ルールの一つになった。規制を何とかクリアするという考え方ではなく,規制を活用して競争力を高めるという発想で製品戦略を立てるべきだろう」と市川氏は最後に語り,講演を終えた。