総務省は2008年12月8日,情報通信審議会情報通信政策部会の「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」の第41回会合において,「政府が簡易チューナーの配布対象の拡大を決定した場合はこの委員会でも対応して欲しい」と要望した。

 情通審が2008年6月に出した「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政が果たすべき役割」の第5次中間答申では,地上デジタル放送の普及策として,「生活保護受給世帯への簡易チューナーの無償給付」などが盛り込まれた。検討委員会は,「施策の実施方法に関する検討ワーキンググループ(WG)」を設置して,施策の具体的な実施方法について検討を進めている。

 こうしたなか,与党の「地上デジタル放送推進ワーキングチーム」は2008年12月4日に,「簡易チューナーの配布対象をNHKの受信料の全額免除世帯にするべき」と政府に申し入れた。NHKの受信料の全額免除世帯には,生活保護の受給世帯に加えて,市町村民税非課税の障害者がいる世帯や,社会福祉施設の入居者などが含まれる。現在,政府は簡易チューナーの配布対象を変更すべきかを検討中である。こうした現状を踏まえて総務省は,「仮に政府が配布対象の拡大を決定したら,WGでもNHKの全額免除世帯を対象にするという前提で検討して欲しい」と述べた。

 今回の会合では,WGが経済弱者向けの支援策に関する検討結果の中間報告が行われた。簡易チューナーは,対象世帯である生活保護需給世帯からの申請に応じて現物を給付(譲渡)する。配布方法は,支援事業の実施法人が直接申請者に送付することを基本とする。簡易チューナーの設定や使用方法などが分からない世帯が発生することが予想されるため,問い合わせ対応の相談窓口を設置する。相談窓口による対応でもうまく視聴できない世帯に対しては,直接訪問して設定などの対応を行う。

 支援の実施時期は,2009年度と2010年度の2年度のみとする。このWGの報告では,支援策の対象を生活保護受給世帯でなおかつNHKと受信契約を締結しているなどの条件を満たす世帯に限定している。この二つの条件を満たすかどうかの確認方法については,「NHKとの放送受信料免除契約による確認を基本とする」とした。さらに簡易チューナーの不正受給と転売の防止策として,申請者には誓約書の提出を求める。この誓約書には,「地上デジタル放送を視聴できる環境にないこと」や「支援完了後5年間は交付の目的に反した譲渡や換金などを行わないこと」が盛り込まれる見通しだ。

 今回の会合では,総務省が今後の検討委員会の進め方を提案した。主な内容は,(1)2009年春に地上デジタル放送の第6次中間答申を出す方向で検討を進める,(2)委員は第6次中間答申に向けて特に議論すべきテーマを事務局に提案する(ひとまずの期限は2008年12月19日),(3)事務局は委員が提案したテーマを整理して次回会合(2009年1月中旬に開催予定)で報告する――というものである。総務省の提案に対して,委員からは特に異論が出なかったため,地上デジタル放送の第6次中間答申の作成時期が例年よりも早まることが確実になった。地上デジタル放送の中間答申は,2004年7月の第2次中間答申以降,毎年6~8月のいずれかに作成されていた。