英国の競争委員会(Competiton Commission)は2008年12月3日(現地時間),英BBC Worldwideと英ITV,英Channel Four Television(C4)の放送事業者によるグループが提案していた商用版見逃し視聴サービス「UKVOD」(開発コード:Project Kangaroo)について,英国のVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービス市場の競争性を損ね,「実質的競争制限」(SLC,substantial lessening of competition)に該当するとする条件付きの判断を示した(発表資料)。

 Peter Freeman競争委員会議長は,競争委員会がUKVODに対して抱いている懸念を具体的に次のように指摘した。

・VODは比較的新しく,急速に拡大しているサービスで,UKVODが多くの恩恵をもたらすことは間違いない。しかし我々は,一般的には競合相手としてみなされているBBC WorldwideとITV,C4間の競争が損なわれ,将来的にVOD市場の競争が制限される可能性がある点を懸念している。競争によって視聴者が得られるはずの恩恵が,何かしら損なわれることは明らかである。

・既にさまざまな形でVODサービスを提供しているほかのプロバイダーが存在している。しかし我々がこれまでに見てきたデータによると,国内制作したコンテンツはUKVODが提供するサービスに強力な競争力を与える鍵となる。この3社はそうしたコンテンツの多くをコントロールしており,強い立場から競合サービスと視聴者の関係に影響を与えることができる。UKVODが提供する規模や魅力に匹敵するコンテンツを,競合サービスが揃えられなくなる可能性がある。

・このような状況において,UKVODは国内制作したコンテンツを競合するVODプロバイダーに提供する際に,好ましくない条件を強制する動機と,影響力を持っている。極論すれば,UKVODは競合サービスから作品をすべて引き上げる可能性もある。どのような形であれコンテンツが減ることは,視聴者に好ましくない影響を与える。

 競争委員会は今後,今回の判断に対して対応可能な救済策がないか諮問し,2009年2月8日を期限に最終報告を行う予定である。