2008年10月27日から4日間、米ロサンゼルス近郊サンタモニカでカンファレンス「Digital Hollywood Fall 2008」が開催された。このカンファレンスは、メディア、広告、テクノロジー側の企業が集まり、新たなテクノロジーとそれを生かすビジネス面とがバランスよく議論されるのが特徴だ。

 今回のDigital Hollywoodで提示された次世代広告の方向性は、インターネットでのブランディング広告の可能性、そしてケータイコンテンツを利用した消費者行動把握の有効性の2点だ。

ブランディング広告の出稿先として存在感増すソーシャルメディア

 米国のインターネット上において、ブランディング広告出稿先メディアとして期待されているのが、「MySpace」、「Facebook」などのソーシャルメディアである。「広告代理店は、ポータルサイトとソーシャルメディアの違いがまだ理解できてないのではないか」(ソーシャルメディア向けアプリケーション開発の米ミクサーキャスト創業者兼CEOのジェニファー・クーパー氏)という指摘があったものの、会員数の増大でソーシャルメディアの存在感は1年前よりも確実に増している。

 こうしたソーシャルメディアへユーザーを呼び込むツールとして利用されているのが、ソーシャルメディア上で動作する単機能のアプリケーション「ウィジェット」と、「Twitter」に代表される「マイクロブロギング」である。ウィジェットは、昨年のDigital Hollywoodでも話題に上ったものの、ビジネスモデルについて議論されているにすぎなかった。今年は、「ケーブルテレビ(CATV)事業者である米コムキャストはウィジェットで加入者を増やし、米トヨタはMySpace登録者へアクセスしたくてウィジェットを作っている」(ソーシャルメディア向けアプリケーション開発の米ギグヤ創業者兼CEOのルーリー・エリゼロフ氏)といったように、ソーシャルメディアに集まる若年層を取り込みたい大手ブランドにもウィジェットが利用されている事例が多く紹介された。

 米国広告業界は、金融危機による短期的な市場縮小への懸念よりも、広告ビジネスのゲームプランが変わりつつあるという長期的な視点に重きを置いているようだ。One to Oneマーケティングを得意とするMRMワールドワイドの上席副社長であるオーグスティン・フォウ博士は、「ブランドをプッシュする広告手法は終わり、消費者との関連性を強めていくのがこれからの広告である」という。また、「広告、メディア業界にとって金融危機は、デジタルトランジションのよいきっかけになる(米インターパブリック・エマージング・メディア・ラボ上席副社長のローリ・シュワルツ氏)」といったポジティブ面を強調する議論が多かった。

ウィジェット広告の可能性についてのセッション
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