将来ビジョンを話すクアルコムヨーロッパの社長を務めるアンドリュー・ギルバート氏。左は,ザイアム事業担当副社長のコルム・ヒーリー氏
将来ビジョンを話すクアルコムヨーロッパの社長を務めるアンドリュー・ギルバート氏。左は,ザイアム事業担当副社長のコルム・ヒーリー氏
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 「これからは,ユーザーが欲しそうな情報を先取りして見つけるサービスが重要になる。ユーザー自身が欲しいものを分かっていて,自ら探す検索とは違うサービスだ」。クアルコムは2008年12月3日,無線サービスの将来ビジョンに関する記者会見を開催し,今回来日した欧州法人の代表を務めるアンドリュー・ギルバート氏が,今後のサービスをこう展望した。国内でも,通信事業者を中心にコンシェルジュ(案内人)やエージェント(代理店)機能を提供するサービスが始まっており,同じような将来展望を示したことになる。

 この種のサービスを推進するため,クアルコムは2008年3月,アイルランドのザイアム(Xiam)を買収した。ザイアムは,データの関連性(relevance)に基づいた推薦(recommend)機能エンジンを開発しており,同エンジンを使うことで膨大な情報の中からユーザーの属性や所在地に基づいてフィルタリングしたサービスを提供できる。今回の来日も,通信事業者にサービス内容を紹介するためだという。

 会見では,欧州の携帯電話によるデータ通信事情も報告された。欧州でも携帯電話からのデータ通信が増えており,端末では2009年にも3G(第三世代移動体通信)のW-CDMA対応機の販売台数が,2G(第二世代)のGSM端末を追い抜くという予測を示した。通信回数についても,2012年にはW-CDMAの通信数がGSMを追い抜く見通しという。さらに,米国では大手事業者のベライゾン・ワイヤレスの端末販売台数の3割がスマートフォンになっていることも報告,こうした状況からギルバート氏は「ようやく日本に追いついてきた。モバイルのデータ通信が,世界的に広がりつつある」とする。

 データ通信の中でも,テレビ放送を含むビデオ配信とインターネット接続の2分野の伸びが大きいとみている。ビデオ配信について同社は,自身が推進するMediaFLOのほか,日本のISDB-T,欧州のDVB-Hの各デジタル放送方式に対応するチップを開発している。全方式に対応することにより,1種類のチップで全世界の需要に応えられるようにする。インターネット通信については,ザイアムのほかにウィジェット(簡易アプリ)など,特定の機種や事業者によらないオープンな技術を同社としては推進するという。同社は,ウィジェットを開発するプラザも買収している。