英Times紙は2008年11月30日(英国時間),米Microsoftが業績悪化中のインターネット大手,米Yahoo!と交渉を再開したと報じた。それによると,MicrosoftがYahoo!から検索エンジンの管理権を10年にわたって取得し,Yahoo!は自社のメール/メッセージング/コンテンツ・サービスを自由に運営する,という条件の話し合いが行われているらしい。契約規模は200億ドルと伝えられた(関連記事:MicrosoftがYahoo!の検索事業買収で交渉中――英Timesが報道)。だが,両社とも記事にまったく取り合わなかった。

 Yahoo!の広報担当者は同日,「うわさ話にはコメントしないし,報道内容はすべてうわさだ」と述べた。

 一体どのような状況なのだろうか。実際に交渉が行われていないのなら,なぜこれほど大々的に報道されたか。しかも,報じられた交渉内容は非常に具体的だ。Times紙は,MicrosoftとYahoo!に米AOLを加えた3社による複雑な取引としている。MicrosoftがYahoo!の検索事業を取得し,多分AOLがYahoo!を吸収合併して経営権を握ることになりそうに書かれている。

 筆者は,単にTimes紙が賭けに出ただけと考える。

 Microsoftが2008年初めに提案した条件よりも小さな規模で,当初の1株当たり33ドルという買い取り価格より安く話をまとめようと仕掛けた,とみる人も多いだろう。Microsoftの幹部は,今もYahoo!の検索事業を絡めた提携に興味があると匂わせている。業界アナリストのなかでは,Yahoo!の業績が低迷し,株価の下がっている今こそ提携を結ぶ絶好のタイミング,とする意見が多い。したがって,MicrosoftとYahoo!は絶対に話し合っているはず,という結論になる。だが,その見方は事実だろうか。

 いや。筆者は,両社がコメントしているように交渉などしていないと見る。