左から笹田耕一氏,Preferred Infrastructure CTO 太田一樹氏,まつもとゆきひろ氏,「サーバ/インフラを支える技術」著者代表の安井真伸氏,吉岡弘隆氏,「サーバ/インフラを支える技術」著者代表のひろせまさあき氏および田中慎司氏,楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏
左から笹田耕一氏,Preferred Infrastructure CTO 太田一樹氏,まつもとゆきひろ氏,「サーバ/インフラを支える技術」著者代表の安井真伸氏,吉岡弘隆氏,「サーバ/インフラを支える技術」著者代表のひろせまさあき氏および田中慎司氏,楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏
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 楽天は2008年11月29日,「楽天テクノロジーアワード」を発表した。同賞は楽天が今年度創設した,インターネット技術の発展に貢献した個人や団体を表彰する賞。金賞にはオープンソース・ソフトウエアの勉強会「カーネル読書会」を主催するミラクル・リナックスの吉岡弘隆氏を選出した。

 発表および授賞式は,同日開催された楽天の技術発表などを行うイベント「楽天テクノロジー・カンファレンス」で行われた。楽天技術研究所のフェローであるまつもとゆきひろ氏などが審査員となっており,審査委員長は楽天の代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏が務めた。

 金賞を受賞した吉岡弘隆氏は,オープンソース・ソフトウエアの勉強会である「カーネル読書会」を1999年から主催している。開催は2008年11月で92回を数える。カーネルとはLinuxの中核部分を指すが,Linuxに留まらず様々なオープンソース・ソフトウエアの専門家を呼び,無償で勉強会を行っている。Linus Toravalds氏の右腕と呼ばれるLinuxカーネル・メンテナ(管理者)であるAndrew Morton氏など海外からの講師も招いている。継続的なコミュニティ活動がインターネット技術の発展に寄与したとして金賞を受賞した。

 受賞スピーチで吉岡氏は「勉強会の交流の中から優れた技術者と技術が生まれる。その技術者と技術を三木谷氏のような優れた経営者にビジネスへつなげてほしい」と語った。

 銀賞は,著書「サーバ/インフラを支える技術」が受賞した。同書ははてな CTO(最高技術責任者)の伊藤直也氏やKLabの技術者といった,実際に大規模インターネット・サービスを運営している当事者が書いた著書である。大規模サービスを実現する現場のノウハウ,そしてそのノウハウを広く公開したことが評価された。

 ルビー賞は笹田耕一氏とベンチャー企業のPreferred Infrastructureが受賞した。笹田氏はRubyの最新バージョンのエンジンであるYARVを開発し,Rubyを高速化,普及に貢献した。また東京大学大学院助教としてRubyを研究しており産官学連携の新しいあり方を実践していることが受賞理由となった。

 Preferred Infrastructureは独自の連想検索エンジンを開発,はてなやエフルート,ITproなどに検索エンジンやレコメンデーション・エンジンを提供している。同社は国際大学対抗プログラミングコンテスト(ACM/ICPC)の世界大会で出会った東京大学大学院や京都大学大学院の情報系研究科出身者が設立した企業。独自の先端技術をベースにベンチャーを成長させていることが評価された。