写真1●インターウォーブン・ジャパンの第一営業部部長の並木昌一氏
写真1●インターウォーブン・ジャパンの第一営業部部長の並木昌一氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●楽天編成部の清水誠氏
写真2●楽天編成部の清水誠氏
[画像のクリックで拡大表示]

 Web制作会社などが参加する日本ウェブ協会は2008年11月26日、企業のCMS(コンテンツ管理システム)導入・活用法をテーマにした「CMS Conference 2008」を東京都内で開催した。楽天などユーザー企業による、CMSの導入を成功に導くノウハウに関する講演や、CMSを提供する企業による製品紹介などの講演が行われた。

 CMSの「TeamSite」を提供するインターウォーブン・ジャパン(東京都港区)の第一営業部部長の並木昌一氏は「企業サイトを短期間で成功に導く秘訣」と題した講演を行った(写真1)。TeamSiteは花王やキヤノンマーケティングジャパンなどページ数が1500~数百万ページ規模のWebサイトを中心に、約130社が利用しているという。

 Webサイトの刷新と同時にCMSを導入する企業は多いが、並木氏はCMSを導入するタイミングを「Webサイトを刷新する前に導入すべき」と主張した。同時では作業の負荷が大きくなるためだという。まず、事前にCMSを導入して、既存のコンテンツを移行する。次に刷新時に不具合があった場合にすぐに以前のサイトに戻せるように、履歴を取っておく。その後に通常の更新作業の裏側で、刷新作業を同時に管理することで、負荷を分散できるとした。

 続けて、TeamSiteを利用する米国企業の約8割が、サイトを訪れたユーザーに合わせてコンテンツを切り替えていると説明した。具体的な事例として、クルーズ旅行会社の米ロイヤル・カリビアン・インターナショナルのWebサイトを紹介した。

 同社は見込み客、会員登録済みの見込み客、予約済み客、過去に利用があった客にユーザーのステータスを分けて、それぞれトップページなどを切り替えているという。例えば、サイトの来訪回数が少ないユーザーにはさまざまなコンテンツを紹介して誘導したり、既存客にはオプションメニューを見せたりするといった対策を取っている。ユーザーのステータスごとに表示するコンテンツを変えた結果、Webサイトの売り上げが30%向上したと説明した。WebサイトのCVR(コンバージョン率)の向上を目指す場合、ナビゲーション、トップ画像などをそれぞれ個別に管理できるCMSで、ユーザーに合わせて自動で表示を切り替えることが有効になることを示した。

 楽天編成部の清水誠氏は、同社のWebサイトなどへのCMS導入・運用経験から得られたCMSで起こりがちな問題とその対策について説明した(写真2)。まず、「Webサイトを運営する上で、コンテンツの公開時だけを管理している企業が多い」と指摘。各コンテンツごとに責任を持つオーナーを決めて、公開から公開終了後に保管するのか、削除するのかといったサイクルを管理すべきとした。こうした定期的な“たな卸し”をすることで、Webサイトを刷新するときにはどのコンテンツが必要かを調査し、削除するといった手間も省けると説明した。

 次に、Webサイトや紙媒体などで利用している、素材の管理について述べた。「ケータイやゲーム機など、コンテンツの配信(メディア)が多様になっても、配信するコンテンツは変わらないが、それぞれを個別に管理するのでは制作・管理コストが上がってしまう」と指摘した。その対策として、メディアやページに依存しない、汎用的な画像を制作して、高解像度で保存することを推奨した。さらに、各メディアで利用した履歴を管理すべきとした。

 そのほか、「コンテンツを部品化する」「ほかのシステムとの連携」「コンテンツの品質を高める仕組み」「コンテンツ管理を分担する」「ためるべきはコンテンツ、システムではない」など、計七つのポイントと対策について解説した。

 続けて清水氏は、どのような社内体制や意識を持ってCMS導入・運用に取り組むべきかのポイントを解説した。「完璧な要件定義は不可能と理解する」というポイントでは、コンテンツの管理を徹底する場合、社内体制や仕事の仕方を変える必要があるが、その要件を一度に定義して完璧に実現するのは難しいと述べた。フェーズを分けて導入し、プロセスや人の意識の変化を、時間をかけて少しずつ進めていくことが重要になると説明した。

 最後に、「(CMSを導入する)事業者側が主体的・戦略的に推進すべき」と訴えた。CMSを提供している企業やWebサイト制作会社にすべてを委託するのではなく、事業やサイトの運営について最も理解している事業者が主体となって、CMSの導入に動くことが重要であると締めくくった。