「こんなに活発に草の根イベントが開催されている国は他にない」---インターネット技術・運用に関するイベント「Internet Week 2008」で2008年11月25日,コミュニティ活動や勉強会をテーマとしたトラック「IT Community Impact! ~世界を変える新たな潮流~」が開催された。

活発に開催される草の根イベント

左から日本UNIXユーザ会の法林浩之氏,カーネル読書会の吉岡弘隆氏,オープンソースカンファレンスの宮原徹氏,IT勉強会カレンダーのやまぐちあゆみ(はなずきん)氏
左から日本UNIXユーザ会の法林浩之氏,カーネル読書会の吉岡弘隆氏,オープンソースカンファレンスの宮原徹氏,IT勉強会カレンダーのやまぐちあゆみ(はなずきん)氏
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 プログラムを企画したビート・クラフトの小山哲志氏は,日本では各地できわめて多数のIT系コミュニティによる勉強会が開催されていると語る。「週末ともなれば開催数が20件を超えることも珍しくない」(小山氏)。こんなに活発に草の根イベントが開催されている国は日本だけではないか,と小山氏は言う。

 日本UNIXユーザ会(jus)の勉強会は約15年前,1994年に始まる。2008年7月には158回目に達し,累計参加人数は約6000人にのぼる。法林浩之氏は「94年当時,セミナーは企業主催の高価なものばかりだった。気軽に参加できるものを,と始めたのがjus勉強会だった」と振り返る。

 ミラクル・リナックスの吉岡弘隆氏が主催するカーネル読書会は99年から始まり,2008年11月で92回を数える。「シリコンバレーでは技術者が会社や組織の壁を越えて自由に議論している。米国勤務から戻ってきて,日本でもそのような場を作りたくて読書会を始めた」(吉岡氏)。

 びぎねっとの宮原徹氏が実行委員長を務める「オープンソースカンファレンス(OSC)」は2004年から始まり,北は北海道,南は沖縄と全国で各地のコミュニティとともに開催されている。33回の来場者はあわせて1万5000人に達する。「オープンソースによる地域づくりにも役立っている」(宮原氏)。

 コミュニティ・イベントや勉強会はここへきてますます活発化していると小山氏は言う。その要因となっているのがIT勉強会カレンダーを代表とするインターネット上の情報交換だ。

 IT勉強会カレンダーは2008年4月に開設された。やまぐちあゆみ(はなずきん)氏らがインターネットで調べたり情報を提供を受けたイベントの情報を登録している。集まる情報の数は増え続け,2008年10月に登録したイベントの数は361件にのぼる。やまぐち氏は「IT勉強会カレンダーの情報をどんどんマッシュアップして,みんなでいいものにしてほしい」と語る。

地域に密着したコミュニティ

左から北海道LOCALの澤田周氏,日本PostgreSQLユーザ会九州支部の清末直氏,関西オープンフォーラムの安田豊氏,toRuby(とちぎRuby勉強会)の池澤一廣氏
左から北海道LOCALの澤田周氏,日本PostgreSQLユーザ会九州支部の清末直氏,関西オープンフォーラムの安田豊氏,toRuby(とちぎRuby勉強会)の池澤一廣氏
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 東京だけではなく,日本の各地域でもコミュニティ活動が盛んに行われている。関西オープンフォーラム(KOF)は2002年から大阪でイベントを開催しており,2008年の参加団体は37団体となった。「関西を元気にしよう,とKOFを始めた。タレントには頼らない,お金はかけない。自分たちでやる」(京都産業大学の安田豊氏)。

 「北海道LOCAL」はOSCなどのオープンソース関連イベントを開催している団体だ。「持続する組織を目指しNPO法人化も検討している」(サイクル・オブ・フィフスの澤田周氏)。

 全国に支部を持つコミュニティもある。日本PostgreSQLユーザ会は北海道,東北,新潟,名古屋,関西,四国,九州,沖縄に支部がある「ほぼ全国と言っていい」(九州支部のアイティマネジメント 清末直氏)。

 スキルはないけれど地域で勉強会を作った,という人もいる。栃木県で自営業を営んでいる池澤一廣氏は,50歳近くなってからRubyを使い始めた。万年初心者から抜け出せず悩んでいた時,近くにdRubyの作者である関将俊氏が住んでいることを知り,「教えてください」とメールを出した。それがtoRuby(とちぎRuby勉強会)ができるきっかけになった。現在は月に一回,公民館で開催している。「toRubyのような小さな勉強会がたくさんできるといい」(池澤氏)。