握手する椎川忍総務省大臣官房地域力創造審議官(手前)と林宇鎭(イム・ウジン) 行政安全部情報化戦略室長。
握手する椎川忍総務省大臣官房地域力創造審議官(手前)と林宇鎭(イム・ウジン) 行政安全部情報化戦略室長。
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 11月20日、日韓両国が主催する「第1回日韓電子自治体政策交流会議」の全体会議と分科会が東京・三田で開催された。討論や交流を通じて日韓両国における電子自治体の課題解決の方策を探り、取り組みの促進を図ることが目的。全体会議には、日本からは椎川忍総務省大臣官房地域力創造審議官ら17人、韓国からは林宇鎭(イム・ウジン) 行政安全部情報化戦略室長ら8人が参加した。全体会議および分科会の主なプログラムは次ページを参照のこと。

 全体会議ではまず、椎川地域力創造審議官と林情報化戦略室長が、あいさつと日韓それぞれの電子自治体施策についての発表を行った。

 基調講演は日本側が小尾敏夫早稲田大学教授、韓国側は金東旭(キム・ドンウク) ソウル大学校行政大学院教授が登壇。双方の電子自治体の現状と課題についてそれぞれ語った。

 早稲田大学の小尾教授の講演「日本の電子自治体の現状と課題」では、電子自治体について25のポイントを挙げ、それぞれ今後の方向性についての考えを述べた。講演の中で小尾教授は、「新電子政府推進法案が次期通常国会にも提出されると思われるが、自治体にも直接関与する内容になるだろう。効果的な法案になるよう期待したい」と、電子政府関連の統合的な法体系の必要性について言及した。

 「行政ICT人材育成」については、「行政関連する研修はたくさんあるが、米国のCIO大学と比較すると、日本は“教える側の人材”がまだまだ」と指摘。「大学というリソースをもっと行政が連携して使っていくべき。官民の協力の仕方を見直すべき」と提言した。

 また、日本では「電子自治体の効果的な国民理解への広報活動」が不足していると指摘。関連して「先進国と呼ばれるカナダやオーストラリアは、『国民のための電子政府』というメッセージがうまく国民に届いている。PRがうまい」「早稲田大学、横須賀市、市の商工会議所でアンケート調査を実施した結果、行政が取り組んでいる防災サービスについての市民の理解度が低かった」と、PRの重要性を強調した。そのほか、「全国的に統一したベンチマーク指標の設定」「高齢者社会に適した電子自治体」など、電子自治体が今後取り組むべき課題を提示した。

 ソウル大学の金教授は「韓国の電子地方政府の現況及び推進戦略」と題した講演を行った。

 韓国の電子自治体システムは中央政府、市道、市郡区のシステムの円滑な業務連携を志向しており、市道(日本の都道府県に相当)の行政情報システムは、政務企画、交通、建築住宅、財政など24領域の行政分野について業務処理のプロセスを標準化して統合的につながっており、部署・個人・機関別の成果管理システムも作り上げられており、インセンティブにもつながる成果管理体系も現在構築中であるという。市郡区(日本の市町村に相当)でも、市道と同様に、31領域の行政業務を統合処理するシステムを構築。市郡区間をつなぐ連携モジュールも開発中だという。

 また、ICT活用の具体的な成果も発表。2007年度には、行政業務プロセスの電子化率は75%、現場業務、指導点検におけるモバイル活用などの電子化率は70%、業務間で共同で活用できる情報は550種に上るという。

 金教授は韓国の電子自治体の今後の方向性として、

  • 中央主導から地方の自律と創意へ
  • 行政中心から住民生活共感型のサービスへ
  • 規模拡大から内容充実・成果志向へ
  • 民間企業・大学の協力を得ての情報化推進
  • 新技術の柔軟な受け入れ態勢

を挙げた。

 なお「第1回電子自治体政策交流会議」は19日から21日まで開催された。19日は木更津市の地域情報化の取り組みについての視察などが行われた。21日はYRP(横須賀リサーチパーク)の視察などが行われた。