写真1●Adobe AIR担当グループ プロダクトマーケティングマネージャーのエイドリアン・ルードウィック氏(右)と,Adobe Flexグループ プロダクトマーケティングマネージャーのデイブ・グルーバー氏(左)
写真1●Adobe AIR担当グループ プロダクトマーケティングマネージャーのエイドリアン・ルードウィック氏(右)と,Adobe Flexグループ プロダクトマーケティングマネージャーのデイブ・グルーバー氏(左)
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写真2●Adobe MAX 2008基調講演で紹介されたNew York Timesが開発中のニュースペーパー・リーダー
写真2●Adobe MAX 2008基調講演で紹介されたNew York Timesが開発中のニュースペーパー・リーダー
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 米アドビシステムズは2009年初頭に,新しいFlash関連技術「Adobe Flash Catalyst(旧コードネームThermo)」のパブリック・ベータ版の公開を予定している。Flash Catalystの特徴は,PhotoshopやIllustratorといったAdobe Creative Suite製品で制作したデザイン・アセット(アプリケーションのUIや外観を構成する素材)を,デザイナー自身がレイアウトして動的効果まで付けられる点だ。

 Flash Catalystでコンテンツを制作する際のワークフローでは,FXG(Flexグラフィック)という共通フォーマットを利用する。FXGはアドビ独自のユーザー・インタフェース定義用XML「MXML」のサブセットであり,そのままアプリケーションとして作り込むことができる。アプリケーションのロジック部分は,同社のRIA(Rich Internet Application)開発ツール「Adobe Flex」の次期バージョン「Gumbo(コードネーム)」を使って開発する。

 アドビのAdobe AIR担当のエイドリアン・ルードウィック氏は,Flash Catalystの特徴を「デザイナーに新しい機能を与える製品」と説明する(写真1)。さらに「UIのクオリティが100%デザイナーの手でコントロールできるようになる。ここが大きい。もう1つ,アプリケーションのコンセプト作りやプロトタイプに使うことで非常に作業がスムーズになるという意見もある」と述べた。

 ウェブ・アプリケーションのデザイン制作では,デザイナーがいったん静止画で作り込んだプロトタイプを,改めてコーディング担当者やFlashの技術者に作り直してもらうことが一般的だ。その際,正確にデザインを再現できないことがよくある。この「画面の再構築作業」を担当するツールがFlash Catalystというわけだ。デザイナーが作り込んだ画面レイアウト(FXG)を,そのまま開発者に渡してアプリケーションに仕上げてもらう,というワークフローが作れる。

 ルードウィック氏は「デバイスフリーのコンテンツは,アドビが奨励している『小さいディスプレイ向けデザインを大きいディスプレイ向けに最適化するデザイン方針』に基づいて機能する必要がある」と語る。1つのコンテンツを複数のデバイスから閲覧する場合を想定すると,PC向けにデザインしたコンテンツをモバイルに適応させる方法には無理があるとする考え方だ。

 New York Timesが開発中のニュースペーパー・リーダーは,この考え方に基づいており,FlashPlayer 10の技術を利用している(写真2)。New York Timesのアプリケーションは,テキストのレイアウトにHTMLを一切使っていない。FlashPlayer 10のテキスト・エンジンでXML化した記事を表示させ,画面サイズに合わせて段組みの組み直しを実現しているという。

 テキスト・ベースのコンテンツは現在HTMLとCSSで提供する方法が一般的だが,Flash Catalystが製品化されれば,コーディング作業無しでデバイスフリーなコンテンツ作りが可能になるだろう。

 アクセシビリティへの配慮やユーザーの都合に合わせたコンテンツの再利用という点に制限があるかどうかは今後検証が必要だが,デザイナーにとってはデジタル・コンテンツの新しい制作手段が1つ増えたという意味で期待できる技術だ。

 アドビは2008年11月16~19日(米国時間)にサンフランシスコで開催のカンファレンス「Adobe MAX 2008」で,Adobe Flash Catalyst(以下,Flash Catalyst)のテクノロジ・プレビューを披露。併せてカンファレンス参加者にプレビュー版を配布した。2009年1月29,30日に東京で開催するAdobe MAX Japan 2009でも配布する予定だ。Flash Catalystは今後,Adobe Creative Suite製品に統合される見通し。