米航空宇宙局(NASA)は米国時間2008年11月18日,深宇宙における「惑星間インターネット(Interplanetary Internet)」の実験に成功したと発表した。この通信ネットワークでは,TCP/IPの代わりに「DTN(Disruption-Tolerant Networking)」と呼ぶソフトウエア・プロトコルを採用した。

 DTNは,NASAと“インターネットの父”として知られるVint Cerf氏が共同開発した。同プロトコルは,探査機が惑星の裏側に移動した場合や,太陽風の発生などによる信号の遅延,中断や切断など,送信先への経路が見つからなかった場合でも,データ・パケットを破棄することはない。ネットワーク・ノードは,ほかのノードと安全に接続できるまでパケットをノードで保持するため,情報は失われずに送信される。

 NASAは今年10月にDTNのテストを開始した。ハートレイ2彗星への途上にある「Epoxi」探査機を火星へのデータ中継衛星として利用したほか,地上にあるNASAのジェット推進研究所(JPL)に火星着陸探査機,軌道衛星,ミッション運用センターに見立てた9つのノードを設置して,実験を行った。この10カ所のノードを介して週2回送信を行い,地球から約2000万マイル(3219万キロ)離れた宇宙船と,宇宙の画像のやり取りに成功したという。

 「現在,宇宙で通信するには,どのデータをいつ,どこに送るのか,すべて手動で設定しなければならない。標準化したDTNによって,すべてを自動化できる」とJPLのDTN実験運用センターでマネージャを務めるLeigh Torgerson氏は説明した。

 NASAによれば,今から数年後には惑星間インターネットによって,複雑なミッションの支援がよりスムーズに行えるようになるほか,月面上の宇宙飛行士に信頼性の高い通信環境を提供できるようになる見通し。

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