市場調査会社の米Gartnerは,電気通信業界に多大な影響を与える米Googleの経営戦略について分析し,通信事業者はGoogleとの競争よりも提携を考慮した方が賢明だとする報告書を米国時間2008年11月13日に発表した。

 Gartnerは,Googleが電気通信業界に大きな影響を与えた出来事の1つとして,700MHz帯オークションを挙げる。米連邦通信委員会(FCC)はオークションの実施に当たり,Cブロックでは各種デバイスとアプリケーションによりオープンなプラットフォームの実装を義務付けるように求めるGoogleの意見を採り入れた。Googleの意図は,広帯域ならではの無線サービスやアプリケーションの提供に向けて,オープンな広帯域ネットワーク・プラットフォームの開発を推進することにある,とGartnerは見る。

 その一方で,Googleはモバイル端末向けのオープンで包括的なプラットフォーム開発を目的とした業界団体「Open Handset Alliance」を結成し,モバイル・プラットフォーム「Android」の普及を推進している。アプリケーションとアクセスのオープン性を確保することで,モバイル・インターネットの世界でも自社の広告配信モデルを普及させたい考えだ,とGartnerは分析する。

 また,Googleは「ホワイト・スペース」の開放にも積極的に取り組んでいる。その関心は自社サービスに対応したモバイル・ブロードバンド・サービスの展開にある,とGartnerは指摘する。

 さらに,Googleはクラウド・コンピューティングを基盤としたSaaS型ソリューション「Google Apps」などを通じて,企業ユーザーの獲得を図っている。まず中小企業に訴求し,次いで大企業の取り込みを図ることで,最終的にはバックオフィスのSaaS需要を掘り起こすのが狙いだ,とGartnerは見る。

 Gartnerリサーチ担当副社長のAlex Winogradoff氏は,「Googleのビジネス・モデルは今後も通信市場をかく乱し,中抜きをすることになるだろう。通信事業者は,差別化ができないコア資産については,Googleとの提携を考えた方が得策だ」と述べている。