写真●パネル討論の会場風景。右からNEC 執行役員常務の伊藤行雄氏,ソフトバンクIDC 取締役 ビジネス開発本部長の磯部眞人氏,経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器 課長の住田孝之氏。モデレータは,日経コンピュ-タ編集長の桔梗原富夫
写真●パネル討論の会場風景。右からNEC 執行役員常務の伊藤行雄氏,ソフトバンクIDC 取締役 ビジネス開発本部長の磯部眞人氏,経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器 課長の住田孝之氏。モデレータは,日経コンピュ-タ編集長の桔梗原富夫
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 2008年11月13日,C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2008会場でエコロジーイノベーションシンポジウムが開催され,「地球環境問題と企業の対応」をテーマにパネル討論が行われた。パネリストは,経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器 課長の住田孝之氏,ソフトバンクIDC 取締役 ビジネス開発本部長の磯部眞人氏,NEC 執行役員常務の伊藤行雄氏(写真)。モデレータは,日経コンピュ-タ編集長の桔梗原富夫が務めた。

 まず最初に,経産省の住田氏が,IT機器による電力消費量が急激に伸びている現状を説明。「2025年には,国内でIT機器やネットワークによる電力消費量が2006年の約5.2倍になる。これを世界全体で見ると約9.4倍になると予想されている」。このため,IT機器の省電力化,あるいはITを活用してCO2排出量を減らす取り組みである「グリーンIT」を推進することが重要であると強調した。

 それでは企業は,どのような取り組みを進めていけばよいのか。政府が特に注目しているのが,データセンターの省電力化だ。「4つの観点から省エネを進めていく。半導体や機器の省エネ,局所冷却による空調の効率化,仮想化技術によるサーバー稼働率の向上,そして最終的にはコンピューティングをハードウエア・ビジネスではなくサービス・ビジネスへ移行させる」(住田氏)。

 こうした論点を受けて,ソフトバンクIDCの磯部氏は,データセンター事業者としての省電力化の取り組みを紹介した。「最近,データセンターの電力問題がクローズアップされているが,トータルに見ればIT資源は分散させるよりも,集中させる方が省エネ効果が高い。サーバーや空調を管理・統制しやすく,電力効率を高めることができるからだ」と話し,広い視野からの議論が必要と主張する。

 既存のデータセンターの取り組みとしては,仮想化技術を使った共用型のホスティング・サービスの省エネ効果が高いと指摘。「導入後,サーバー台数は34%,CPUコア数は69%,電力消費量は55%,ラック数は25%,運用コストは35%に削減できた」と,磯部氏は仮想化の有効性をアピールする。

グリーンITの推進にはCO2削減モデルの共有化が重要

 ここで論点は,IT機器の省エネ化(Green of IT)から,もう一つの重要な切り口---ITを活用することで,事業活動や社会のエネルギー効率を高める取り組み---Green by ITへと移った。CO2排出量の削減という意味では,Green of ITよりも,Green by ITの方がはるかに効果が高いと言われている。

 「企業活動の様々な局面においてGreen by ITを実践し,高いCO2削減効果を実証している」。こう語るのは,NECの伊藤氏だ。例えば,オフィスにおけるワークスタイル変革。NECブロードバンドソリューションセンターは,オフィスの移転を契機としてシンクライアントやモバイル端末などを導入,オフィスのフリーアドレス化,ペーパーレス化,テレワークを推進した。この結果,「移転の前後で事業活動に伴うCO2排出量を43%以上削減できた」と検証結果を示す。

 一方,NEC米沢工場ではパソコンの製造工程にRFIDを導入し,生産現場のCO2排出量を大きく削減した。それまで1日当たり10万回行っていた紙のバーコードの読み取り作業をRFIDを使った無線通信に置き換え,年間約5300トンのCO2排出量を削減できたという。

 グリーンITを着実に推進するには,こうした具体的な取り組み事例を発掘し,モデルとして共有していくことが重要である。一方で,取り組みによる環境貢献を適正に評価し,貢献に応じたインセンティブを付与する仕組みを構築すべきだ----モデレータの桔梗原編集長はこう議論を総括し,パネル討論を締めくくった。