写真●左から,セイコーエプソンの酒井明彦氏,アビームコンサルティングの岩澤俊典氏,独SAPのサイモン・デール氏,NEC信息系統(中国)の木戸脇雅生氏<BR>(撮影:皆木優子)
写真●左から,セイコーエプソンの酒井明彦氏,アビームコンサルティングの岩澤俊典氏,独SAPのサイモン・デール氏,NEC信息系統(中国)の木戸脇雅生氏<BR>(撮影:皆木優子)
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 「企業は今,グローバルなビジネス展開が欠かせない。こうした中,通貨為替リスクや経営資源の地域性,現地での人材育成など,グローバル化によって生じる各種の要件にどう対処していけばよいのか」---。C&Cユーザーフォーラムは2008年11月12日,グローバル経営に携わるユーザー企業とITベンダーによるパネル討論を開催し,グローバル化の勘所を探った。

 パネル参加者は4名。(1)グローバル企業の代表としてセイコーエプソン取締役情報機器事業セグメント副担当の酒井明彦氏,(2)コンサルタント業界からアビームコンサルティングのマネージングディレクターである岩澤俊典氏,(3)ソフト・ベンダーから独SAPのアジアパシフィック・ジャパン地域担当シニアバイスプレジデントCTO(最高技術責任者)であるサイモン・デール氏,(4)海外の現地SIベンダーからはNEC信息系統(中国)で総裁を務める木戸脇雅生氏。モデレータは日経BP社日経情報ストラテジー編集長の多田和市が務めた。

アジアで作ったモノを世界で売る図式は成り立たなくなる

 パネルの冒頭では,セイコーエプソンからグローバル経営の実態が報告された。酒井氏はまず,同社の売上額と従業員数の地域分布を示した。売上額では,日本,米国,欧州,アジア・オセアニアの4つの地域でほぼ同額となっている。一方で従業員数では,日本が売上額と同様の4分の1のシェアであるのに対して,米国と欧州の従業員比率は小さく,アジア・オセアニアの従業員比率が多い。つまり現状では,日本で設計し,アジアで製造し,米国や欧州が主要な販売対象となっていることを意味する。

 これを踏まえた上で酒井氏は,アジア圏で作ったモノを世界で売る図式は,もう成り立たないのではないか,と提言。新たなフォーメーション(体制)を築く必要があるとした。アジアとの関係では,QC(品質向上)活動において日本はすでにアジアに勝てない状況にある。欧州との関係においても輸出超過が続いており,部品をユーロ圏内で調達できていないと解説。標準化できる部分はCentralization(集中化)した上で,経済活動のライフサイクルをエリア(地域)内で循環させるDecentralization(反集中化)を進める必要がある,とした。

 同社のIT基盤は,経営の実態を捉える基礎部分にSAPのERP(統合基幹業務システム)を利用。この上で,将来の見通しや計画などを司るITシステムを,NECと組んで構築/運用しており,グローバルPSI(生産・販売・在庫)を実現し,リードタイム(調達時間)の短縮と経営スピードの迅速化に取り組んでいるという。