アカマイは2008年11月12日,同社の提供する分散処理サービス「EdgeComputing」上で利用するアプリケーション開発のため,国内のソフトウエア開発会社7社と「EdgeComputing アライアンス」を設立すると発表した。

 アカマイでは日本を含む全世界のインターネット接続事業者(ISP)のNOCなどに,同社の専用サーバー(以下,アカマイ・サーバー)を約3万4000台設置している。インターネットのエッジに近い部分に配置したアカマイ・サーバーに,WebページのキャッシュやWebアプリケーション処理などを一部担わせることで,データ・センター側への負荷の一極集中を防ぐというサービスだ。

 「クラウド・コンピューティング・サービスを提供する他の企業は,データ・センター内の設備のスケール・アウトを進めている。ところが,インターネット側のスケール・アウトを実施する企業はあまりない。アカマイはそこを狙っていく。グーグルやアマゾンのクラウドを巨大な発電所に例えると,送電線と変電所の役割を果たすのがアカマイだ」(アカマイ日本法人の小俣修一社長)。

 具体的には,アカマイ・サーバー上で稼働する「Edge Side Includes」と「EdgeJava」の二つの技術を使う。Edge Side Includesは,Webページをアカマイ・サーバーに部分的にキャッシュするための仕組み。EdgeJavaは,Webアプリケーションの機能の一部(MVCモデルで考えるとViewとModelの部分)をアカマイ・サーバー側に搭載して,データ・センター内のWebアプリケーション・サーバーの処理を分散する仕組みである(図1)。Edge Side Includes,EdgeJavaの機能は,既存のアカマイ・サーバーに組み込まれているという。

 今まで国内では,Edge Side Includesにはある程度実績があるものの,EdgeJavaの導入例はほとんどなかった。アカマイでは今後,国内でのサービス提供を強化するため,日本のソフトウエア開発会社とアライアンスを組み,EdgeComputingプラットフォーム上で動くサービスやエンジンの開発を推進したい考えだ(図2)。アライアンスに参加する企業は,クラスメソッド,セカンドファクトリー,デジタル・クルー,デフィデ,バーチャルテクノロジー,プリファードインフラストラクチャー,リトルソフトの7社である。

図1●EdgeJavaの概要<br>インターネットのエッジに配置したアカマイ・サーバーに,Webアプリケーションの機能の一部を分散する。
図1●EdgeJavaの概要
インターネットのエッジに配置したアカマイ・サーバーに,Webアプリケーションの機能の一部を分散する。
[画像のクリックで拡大表示]
図2●EdgeComputing アライアンスの概要<br>アカマイは参加企業に,開発のためのリソースキットやテスト環境を提供する。
図2●EdgeComputing アライアンスの概要
アカマイは参加企業に,開発のためのリソースキットやテスト環境を提供する。
[画像のクリックで拡大表示]

 まず,アカマイはアライアンス参加企業と協力して,EdgeComputingプラットフォーム上で動作するサービスやエンジンを開発し,パッケージとして販売する。「すでに,米国での実績を基にアカマイ側で用意したパッケージが5種類ある。そのほか,今回のアライアンス参加企業にもパッケージを提供していただく予定」(小俣社長)。さらに,企業ユーザー向けに,EdgeJavaなどを利用したシステムの受託開発も行う。対応する開発環境は,現在のところTomcat 5.5,Java SE Development Kit 6(JDK 1.6)。2009年上半期をめどに,JRuby,JPython/Jython,Adobe Flexなどにも対応する予定という。

 課金システムについては,EdgeComputingのプラットフォームを提供するアカマイと,その上で稼働するソフトウエアの開発元(アカマイまたはアライアンス参加企業)に対して,それぞれサービス利用料を支払うことになる。価格は個別見積もりだが,プラットフォーム利用料は100万プロセス単位での従量課金,ソフトウエア利用料は月額料金になる見通しだ。

[発表資料へ]