写真●米国インターネット・通信業界専門ジャーナリスト,リサーチャー小池良次氏<BR>(撮影:皆木優子)
写真●米国インターネット・通信業界専門ジャーナリスト,リサーチャー小池良次氏<BR>(撮影:皆木優子)
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 2008年11月11日,C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2008の講演に登壇した米国インターネット・通信業界専門ジャーナリスト,リサーチャーの小池良次氏は,米国IT業界のクラウド・コンピューティングに関する動向を,「クラウド・アプリケーション」と「クラウド時代のハードウエア」の2つの視点から説明した(写真)。

 「米国では今,マッシュアップの開発競争が激化している」(小池氏)。マッシュアップは提供元の異なるWebコンテンツを組み合わせて新しいサービスを作成したもの。例えば,企業ホームページのアクセス案内にGoogleマップが使われているのをよく見かけるが,これがマッシュアップの典型的な例である。個人がiGoogleやMyYahooに画像や動画を置いたサイトもマッシュアップであり,この個人向けマッシュアップが今米国で急増しているという。

 小池氏は,米国でマッシュアップが急増している要因を2点指摘した。1点目はマッシュアップに掲載できるコンテンツの増加。「以前はGoogleマップくらいしかなかったが,今は増えている。例えば,個人サイト向けにポータル機能を提供するNetvibesには,11万7000種ものウィジェット(ブログ・パーツなど)がある」(小池氏)という。2点目は「マッシュアップはクラウド・アプリケーション化できること」である。小池氏は,「ひとつのコンテンツを複数のマッシュアップに組み込み,それを様々なデバイスで利用することは,クラウド・コンピューティングにおけるアプリケーションの考え方として非常に重要である」と説明する。

 個人向けのマッシュアップと同時に,企業向けのビジネス・プロセス・マッシュアップ市場も拡大している。小池氏は,ビジネス・プロセス・マッシュアップを提供する米国企業として,米Salesforce.comを紹介した。「自らをクラウド・アプリケーション・プロバイダと公言している」(小池氏)というSalesforce.comは,クラウド・アプリケーションを構築するためのビジネス・プロセス・マッシュアップを提供している。同社は米Googleや米Amazon.comとの連携を発表しており,GoogleやAmazon.com が提供するOS,アプリケーションを組み込んだマッシュアップをSaaS(Software as a Service)方式で配信することで,クラウド時代の新しいアプリケーションが完成する。「ブラウザと,ブラウザが起動するパソコンと,Salesforce.comのサーバーにアクセスでする回線があれば,他には何もいらなくなる」(小池氏)。

 講演の2つ目の議題,クラウド時代のハードウエアについては,講演の残り時間が少なくなったため,小池氏は次の一言にまとめた。「サーバーはさようなら,ITハードウエアはアウトソーシングへ」。クラウド・コンピューティングの台頭により,企業はサーバーを購入せずに,アウトソーシングするようになるとの意見を述べた。「クラウドの時代は,ハード・デバイス王国の日本にとって厳しいものになるのではないか」(小池氏)。