米Microsoftによる「Windows 3」の提供がついに終了した。このOSは,Microsoftに現在の名声と富,IT業界での圧倒的な地位をもたらす礎となった重要な製品である。Microsoftでは,このWindows 3製品系列の最後の生き残りとして,組み込み機器市場の「Windows for Workgroups 3.11」をハードウエア・ベンダー向けに提供し続けていた。そして,最初のリリースから15年が経過し,技術的な改良が終了してから数えても10年以上が過ぎて,すっかり時代後れとなったOSを,Microsoftはついに引退させた(編集部注:Windows for Workgroups 3.11はWindows 3.11にTCP/IPなどネットワーク機能を組み込んだOS。日本語版が正式に販売されることはなかったが,米国では大ベストセラーとなった)。

 MicrosoftのJohn Coyne氏は,2008年7月(米国時間)のブログ記事で,「11月1日以降,組み込み分野でWindows for Workgroups 3.11のOEMライセンスを利用できなくなる」と注意を呼びかけた。同時に,「組み込み分野には,ほかの分野よりも長い期間にわたって古いOSを販売し続けられる特徴がある」(Coyne氏)とも語っている。Microsoftが一般パソコン向けのWindows for Workgroupsの提供を打ち切ったのは,もう7年も前の2001年のことだ。

 このWindows for Workgroupsには,当時はあまり注目されなかったが,現在のWindowsまで続く重要な技術がふんだんに組み込まれていた。たとえば,32ビット・コンピューティングやファイル・システム・モード,ワークグループ型ネットワークなどがそうである。当時は,16ビットCPUの「80286」プロセッサを使うパソコンが大多数を占めている時代だったが,それよりもさらに1世代古い動作周波数10MHzの「8086」プロセッサ(編集部注:1978年発表)とメモリー容量640Kバイトという貧弱なシステムでも動いた。最近では,旅客機向けエンタテインメント・システムやレジなどの機器のOSとして利用されている。

 不思議なことだが,Windows for Workgroupsは32ビット・コンピューティングを広めた後継OSの「Windows 95」より寿命が長かった。そうなると,現在Windowsの大黒柱といえる「Windows XP」の寿命が気になるだろうか。心配は無用だ。MicrosoftはWindows XP向けのサポートをあと数年は続けると約束している。