写真1●東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チームの荒井孝文氏
写真1●東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チームの荒井孝文氏
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写真2●「マイ・ペッツ・アワード by TOSHIBA」のホームページ
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 重厚長大な企業イメージの東芝だが、多様化する消費者とのコミュニケーション手段として、CGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)の活用に積極的だ。「YouTube」日本版初のスポンサーチャンネル開設企業となり、ブランディングにも効果を上げている。

 東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チームの荒井孝文氏(写真1)は2008年11月5日、「NETMarketing Forum Fall 2008」で講演し、YouTubeのほか「GREE」「MySpace」などCGMサイトを広告・宣伝に活用した具体的な事例とその成果の詳細を語った。

 荒井氏はまず、CGM活用の目的は「新しい東芝ファンを作って、東芝のサイトへ誘引すること」と、「東芝ブランド、商品への親近感を持ってもらうために、人が集まるCGMサイトへ出て行ってブランディングを行うこと」の2点があると説明。

 その目的を達成するための基本的なポイントとして、従来の東芝サイトに無い面白い「コンテンツ」、広告誘導以外でアクセスを集める「バイラルによるPV(ページビュー)増加策」、「動画コンテンツ活用」、話題となるメディアを使う「パワーメディアの活用」の4点を挙げた。

 講演では2006年12月以降に実施した事例として、東芝製品を使ったマジックの動画をYouTubeで配信した事例、携帯電話のキャラクター「トウシバ犬」を活用したGREEでの事例、日本初のYouTube広告出稿事例、携帯電話のキャラクター「Bob Born & Born Family」を使ったMySpaceでの事例などを紹介した。

コンテスト入賞作品の視聴回数は90万回以上

 最新の取り組みとして解説したのは、YouTubeのコンテスト機能を日本で初めて活用した「マイ・ペッツ・アワード by TOSHIBA」(写真2)。2008年7月から3カ月間開催した。YouTubeに一般の人がアップロードしている動画ではペット動画が圧倒的に多いことに着目し、ペットを題材にしたという。

 動画コンテストを製品の訴求につなげるために、静かさが特長の掃除機「クワイエ」、空気清浄機能付きのエアコン「大清快」、携帯電話「Sportio」の3製品について、犬や猫、トウシバ犬が登場するオリジナルムービーを用意。投稿作品の再生前後に配信した。

 ターゲットは20~30代女性をメーンとした。YouTubeの中だけで告知してはユーザー層が限られると考え、AdWords広告を活用し、最初はペット好きの人から、動画好きの人、一般のインターネットユーザーへとターゲットを広げていった。

 その結果、動画を募集した3週間の動画投稿件数は483件、当初1カ月間の投票数は8309票となった。この結果について荒井氏は、「日本で初めての(YouTube上での)コンテストなのでどう評価していいかは分からない」としながらも、米国の事例などから判断すると、いい数値だったという。

 製品宣伝用に作った動画の視聴回数は36万回以上、コンテスト入賞作品の視聴回数は90万回以上に達した(YouTubeモバイルなどでの再生は視聴回数には反映されていない)。

動画視聴者の25%が東芝サイトで製品情報を閲覧

 また、コンテスト終了後にネット調査を実施し、ブランディングなどにどのような効果があったかを分析した。調査は「Yahoo!リサーチ」のモニター、3万2660人から回答を得た。

 その結果、マイ・ペッツ・アワードのサイトを「確かに見た」人は6.7%、「見たような気がする」人も含めると15.8%に達した。荒井氏は「かなり高い数字だと思う」と評価している。さらにYouTubeに週1回以上アクセスする人に限定すると、「確かに見た」人は11.4%、「見たような気がする」人も含めると25.4%に達した。

 動画視聴後の行動は、「家族や友人とこのサイトを話題にした」が26%、「ブログやSNSでこのサイトを話題にした」が10.2%、「東芝のホームページで東芝製品について調べた」が25.2%、「東芝のホームページ以外のインターネット上で、東芝製品について調べた」が24.4%、「お店に行って東芝製品を見てみた」が11.8%という結果になった。何らかのアクションを起こした人は56.7%に上った。荒井氏は、3カ月間にわたる長期間のキャンペーンなのでこのような成果が出たと推測している。

 最後に荒井氏は、「家電製品ではネットで情報収集する人が5割以上を占める。ただ、サイトを見てすぐ買うわけではなく、数カ月後に購入が当たり前」と、消費者の現状を説明。そのため、「中長期的な効果指標が大事で、ブランディングも重要。費用対効果を考えると、中心はネットマーケティングになっていく。いろいろな形で取り組んでいきたい」と、今後の抱負とともにネットマーケティングの重要性を示して講演を締めくくった。