マツダ広報本部グローバル広報企画部部長の若林敬市氏
マツダ広報本部グローバル広報企画部部長の若林敬市氏
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 マツダ広報本部グローバル広報企画部部長の若林敬市氏(写真)が「マツダにおけるアクセス解析の取り組み」と題して,2008年11月5日に開催した「NET Marketing Forum Fall 2008」の特別セミナーで講演。数々の失敗談など外部から伺い知れない実例を豊富に紹介しながら,企業サイト管理者が陥る可能性のある問題とその対策を具体的に伝えた。

 マツダのインターネットへの取り組みは,企業活動のサポート,ブランド体験提供,顧客コミュニケーションという3つの目的を持つという。この目的に対しマツダは,確立した運用フローを維持し,強いガバナンスを作って運用効果のチェックを続けている。

 そのための体制が,IRや販売,広報など部門別のコンテンツホルダーが集まって組織した「マツダインターネット委員会(MICE)」だ。MICEの中心となるのは広報部で,委員長は若林氏が務める。分権的な統治体制を採用した組織として,部会を設けて活動している。こうしたMICEの活動を方向付けているのが,アクセス解析結果のデータだという。

 若林氏は,マツダのアクセス解析は「PDCAのCからA,すなわちアクションに結びつけることが大切。次に打つ手を考えるための施策」と位置づける。異なる部門で構成するMICEでは,サイト運営に対する各担当者の思惑が別方向に向いがちだ。そこで,各部門の担当者の意識を整え,同じ方法に進める武器の1つとしてアクセス解析を捉えていると語った。「管理責任者がアクセス解析についての情報や知識をしっかりと持ち,それを各部門に提供すること。これが管理側の強みにもなる」というわけだ。

各解析レポートの具体的な内容を紹介

 マツダでは,サイト解析は大きく,「マツダサイト全体のアクセス解析」「各オーナーによるコンテンツごとのアクセス解析」の2種類に分けて実施している。各種の解析はレベルを分けて実施しており,レベルの分け方と実施目的を説明した。ここで若林氏は,アクセス解析レポートの内容を解析内容と解析深度の2軸を持つグリッドにマッピングした図を紹介。この図に沿ってアクセス解析を検証することがマツダの解析作業のすべてだと語った。

 次に,各解析レポートの具体的な内容について説明した。運用しているアクセス解析システムから自動配信されるレポートのキャプチャ画面を公開したり,実際のレポートの一部を表示しつつ,ここから得られる問題とその対応状況を述べた。

 例えば,レポートの中で「サイトの健康診断」目的にあたるデータを紹介しながら,実際に行った販売促進キャンペーンとその結果の検証方法について語った。また,別のレポートでは,直帰率に着目。ここから導いた仮説と,実際に行った改善策を紹介。改善後と改善前のページを見せたうえで,この改善が回遊率を高め,効果を上げたと語った。そのほか,直帰率の高かった特設サイトを効果的に改善したレイアウトの工夫についても説明した。

 さらにマツダが過去に行ってきたアクセス解析における取り組みの歴史を紹介。その軌跡のなかで得た教訓などを具体的な数字をもとに公開し,参加者と共有した。功を奏さなかった取り組みについては,「アクセス解析勉強会が,(解析システムの)使い方中心の講義であり,できること,わかることが全く伝わっていなかった」と当時の問題点を挙げ,最終的に現在の取り組みに至る道筋を細かく紹介した。現在はネットの専門家でないチームがどうネットを活用して行くか,外部利用によるレポートの制作や改善事例の共有によるノウハウ蓄積を進めているという。

 最後に若林氏は「アクセス解析は難しい。が,信じるものとしては救われたい」と語り,事例別に顕著な問題点と,その対策例をセットで次々に紹介。担当者が「救われる」ために必要なアドバイスを網羅的に提供した。

■変更履歴
公開当初の記事本文で「中央集権的な統治体制を採用した組織」としていましたが,「分権的な統治体制を採用した組織」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/11/07 20:00]