写真1●電通アベニューA レイザーフィッシュ代表取締役社長の渡邊竜介氏
写真1●電通アベニューA レイザーフィッシュ代表取締役社長の渡邊竜介氏
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写真2●電通アベニューA レイザーフィッシュグローバルマーケティング部プロデューサーの嶋田正邦氏
写真2●電通アベニューA レイザーフィッシュグローバルマーケティング部プロデューサーの嶋田正邦氏
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写真3●マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部デザイナー製品部シニアプロダクトマネージャーの朝岡絵里子氏
写真3●マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部デザイナー製品部シニアプロダクトマネージャーの朝岡絵里子氏
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写真4●イメージング代表取締役の池本克之氏
写真4●イメージング代表取締役の池本克之氏
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 2008年11月5日,ウェスティンホテル東京(東京都目黒区)で開催された「NET Marketing Forum Fall 2008」のキーノート・パネルでは,「新しいネットマーケティングを拓くリッチコンテンツとは」と題したパネルディスカッションを実施。リッチコンテンツの現状や可能性について議論した。

 パネラーとして登壇したのは,電通アベニューA レイザーフィッシュ代表取締役社長の渡邊竜介氏(写真1),同社のグローバルマーケティング部プロデューサーの嶋田正邦氏(写真2),マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部デザイナー製品部シニアプロダクトマネージャーの朝岡絵里子氏(写真3),イマージュホールディングスのグループ会社でEC(電子商取引)サイト運営などを手がけるイメージング代表取締役の池本克之氏(写真4)である。日経ネットマーケティング編集長の渡辺 博則がモデレータを務めた。

 まず渡邊氏が,企業や政党でリッチコンテンツの活用が高まっている現状を説明した。「民主党の小沢一郎氏が,ニコニコ動画の生放送に登場して,ネットユーザーに歩み寄っているほか,ケータイ,パソコンなどのリッチコンテンツを活用してアプローチしている」(渡邊氏)。また,昨年,3大広告賞を総なめにした,ユニクロのブログパーツ「UNIQLOCK」が,同社を全世界レベルのブランドに押し上げることに寄与したと説明した。

 また,インターネットが一般化したことで,企業からの一方的な情報提供から,ユーザー同士で製品・サービスに対する情報を伝え合うようになった。これにより,選択権が消費者に移ったという。消費者との継続的な関係作りが重要になるとした。

 続いて,朝岡氏がマイクロソフトの新しいリッチコンテンツ制作の技術「Silverlight2」が持つ2つの可能性について説明した。

 1つはリッチメディアの配信。すでに,USENが運営する動画配信サイト「Gyao」やヤフーが運営するメジャーリーグの情報サイト「MAJOR.JP」などがSilverlight2による,動画配信を導入しており,高い画質の動画配信を実現しているという。また,小さな画像をマウスホイールの操作で高画質のまま拡大・縮小したり,ドラッグ・アンド・ドロップで移動するといった操作を可能にする「Deep Zoom」機能を紹介。BIGLOBEが運営する写真共有サイト「ウェブリアルバム」がこの機能を活用していると説明した。

 もう1つは,ブラウザー上でより高度な操作性を実現するRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)のプラットフォームとしての可能性である。朝岡氏は楽天と共同で開発した,アフィリエイタ向けのブログパーツを紹介した。このブログパーツを使うと,アフィリエイタが紹介したい商品を選択してコメントを記載するだけで,商品をフルスクリーンで見せられる機能を簡単に実装できるという。

 嶋田氏はDeep Zoom機能を使えば,「アパレルや化粧品販売をするうえで商品使用後の肌のキメなど,ディテールをマウス操作だけでシームレスに見せられるようになり利便性が増す」と指摘。また,バナー広告上で寄ったり引いたりするユニークな動作も実現できると事例を交えて説明した。

リッチコンテンツもROIを測る指標になる

 Silverlight2は企業のデータベースとの連携や,トラッキングの機能が優れているのも特徴だという。中でも「View Conversion」という概念がROIとしては有効であると説明。これは,Silverlight2で制作したキャンペーンサイト・バナー広告を見たブラウザーにCOOKIE(クッキー)を付与するというもの。これによって,そのときにはクリックや申し込みをしなくても,別の経路で申し込んだときに,該当するキャンペーンサイト・バナー広告を見た履歴があることを分析できる。「従来は効果が見えにくかったブランディング広告が,コンバージョンに寄与したことがわかる」(嶋田氏)と,Silverlight2がブランディングとROIの両立を可能にすると説明した。

 こうした話を受けて,池本氏は「オークションでDeep Zoomを使った見せ方ができれば,ディテールが見えるので査定するうえでも魅力的だ」と感想を述べた。また,View Conversionを活用すれば,これまで効果測定が難しかった部分も解消できる可能性があるとした。

 続けて,Silverlight2が持つROIに対する可能性は何かという問いに対して,朝岡氏は「データ連携のしやすさがキーになる」と回答。「データ連携をすることで効果がトラッキングできる。そのデータを分析することで,アクセスしていた人の嗜好(しこう)にあったコンテンツのレコメンドが作りやすくなる」(朝岡氏)と説明した。また,従来のHTMLの入力フォームでは,途中で間違えると離脱してしまう人がいたが,リッチコンテンツの導入により入力途中でのエラーをわかりやすくできれば,購入などの目的にスムーズに導けるので離脱率を下げられるとした。

 リッチコンテンツでは難しかったSEO(検索エンジン最適化)対策については,「米トヨタ自動車のキャンペーンサイトをSilverlight2で刷新したところ,数カ月で順位が跳ね上がった」(朝岡氏)と,Silverlight2がSEOでも相性がいいことが証明されたと語った。

 Silverlight2を使ったサイト構築をするうえでのコストについて,嶋田氏は「Flashで制作する場合と同じ程度」という。ただ,「Flashでは専門家に頼りがちだったところが,Silverlight2ではシステム開発の人間など多くの人間に作業が分担されるため,早く納品できるのではないかと考えている」(嶋田氏)と述べた。また,これまで更新するのが難しかったFlashサイトに比べて,制作前に要件定義をすることで更新が容易になる。長期的なサイトを制作する場合にはランニングコストの削減につながると説明した。

 最後に池本氏は,リッチコンテンツのどの辺りに魅力を感じるかという問うに対して,「動画に映っているものすべてをデータベースと連携して,販売に結びつけるなどビジネスのチャンスにできる。それによりテレビCMとネットCMの中間のようなジャンルに広がる」と今後のリッチコンテンツの可能性に期待を寄せた。