写真●JTB情報システム 取締役副社長の北上真一氏
写真●JTB情報システム 取締役副社長の北上真一氏
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 2008年11月5日,ウェスティンホテル東京(東京都目黒区)で開催された「NET Marketing Forum Fall 2008」の基調講演でJTBグループのネット戦略に携わってきた,JTB情報システム 取締役副社長の北上真一氏(前i.JTB代表取締役社長,写真)が「消費者をクロスメディアポイントでとらえるJTBのeマーケティング戦略」と題して講演をした。

ナンバー1でなくオンリー1のサイトが求められる

 まず北上氏は消費者がネットでどのような情報を収集しているかについて説明した。消費者に対して実施したアンケートの回答結果から,「旅行」に関する情報を調べると回答した比率が,「パソコン・コンピュータ」や「CD・DVD」などに次いで4番目に高い42.1%を占めたこと。さらに,オンラインで購入した製品・サービスに関するアンケートでも,同様に4番目に高い40.2%に達しているというデータを挙げて,旅行チケットをオンラインで予約する消費者が増えていることを示した。

 さらに,旅行チケットのネット販売比率が高まるにつれて,従来型の旅行業者が淘汰されるのではないかと言われている点に反論。「従来型の旅行事業者もWebを広告やDMにフル活用している。さらに,販売,商品企画含め,人間が携わる付加価値が出せることが店頭販売の強み」(北上氏)とした。

 北上氏は,オンライン市場の特徴として3~4人の小グループやファミリーでの複数ルーム予約では弱いと指摘。対して,一人での宿泊予約の比率は店舗では6%だが,ネットでは約10ポイント上がり16%であると説明し,「日本でもナンバー1ではなく,オンリー1が求められる」(北上氏)と語り,競争の激しい旅行業界で生き残るには,Webと店舗それぞれの特徴を生かした,独自の戦略を展開することが重要とした。

 北上氏はサイトへの訪問者数を増やし,成約率を上げて売り上げを伸ばすといったネットでの販売構造について,店頭販売と基本的な構造は変わらないと説明。ネットだけではなく,既存のビジネス戦略も生かしていく必要があるとした。

 ネットでの訪問者数を増加させる施策では,検索エンジン対策を挙げた。消費者の75%が検索エンジンで情報を探すというデータから,消費者の購買モデルがAIDMAから,検索(Search)や情報共有(Share)といった,消費者同士がマーケティングし合うAISASに変化していると説明した。

 この変化について,北上氏は「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログを通じて消費者同士で製品・サービスの評価,感想を交換している。企業はそういったサイトを見ることで,評価や感想といった消費者の生の声を無料で得られる」と,企業もCGM(コンシューマ・ジェネレーテッド・メディア)サイトに書き込まれた消費者の声に耳を傾けるべきだということを示した。

 JTBにおける消費者の購買行動においては,複数の販売チャネルをまたいで利用する人が増えているという。具体的には,店頭でパンフレットを見て,自宅でネットを使い商品情報を探す。その後コールセンターに直接電話して注文するといった例を挙げた。JTBではそういった動きに対応できるように,様々な入り口を提供していると説明した。