写真●サイバーエージェントのコミュニケーションディレクターである須田伸氏
写真●サイバーエージェントのコミュニケーションディレクターである須田伸氏
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 2008年11月5日開催の「NET Marketing Forum Fall 2008」のキーノート・トラックでサイバーエージェントのコミュニケーションディレクターである須田伸氏(写真)が登壇し,「生活者が情報発信する時代の広告コミュニケーション」と題して講演を行った。

 はじめに,米国大統領候補の予備選で有力候補者と見られていた議員が失言した様子が動画投稿共有サイトのYouTubeで公開されたことで,その議員が予備選で負けた事例を紹介。「生活者と情報の発信者が二分されていた時代からコミュニケーションの作法は変わった」と指摘し,「マスメディアから個人へと,コミュニケーションの主役の座が移る“大政奉還”が起こった」と位置付けた。

 もちろん,従来マスメディアが果たしてきた役割が完全に失われた訳ではない。しかし,テレビや新聞広告を大量に投入すれば,どのような業種のどのような企業の製品でも効果が表れるといったやり方は,もはや通用しなくなってきた。「ややこしい時代ではあるが,自社にとって最適な手法にチャレンジする企業も登場している」と須田氏は語り,その具体的な取り組みとして同社が関与した日本マクドナルドとルイ・ヴィトンの二つの事例を紹介した。

日本マクドナルドは素材を提供し,8528本のブログ記事を露出

 日本マクドナルドは,同社が展開する新業態の「マックカフェ」で新製品を発売するにあたり,サイバーエージェントの「Ameba(アメブロ)」の「ブログネタ」というサービスを利用した。これは,ブロガーがブログの記事(エントリー)を書くための題材(ネタ)を提供するもので,毎週15個のネタを提供している。その中でマクドナルドがスポンサーとして提供するネタを用意した。

 「従来の広告的な考え方では新製品の発売告知を依頼することになるが,それではブロガーが書きたいとは思ってくれない。ブロガーがいかに気持ちよく自発的に書いてもらうかを考えた」(須田氏)。そこで,ブログネタのテーマとして「メロンパンは好きですか?」という文書を提示し,マックカフェの新製品の一つであるメロンパンについて自由に書いてもらうことを狙った。記事では,マックカフェのロゴをブログ上で自由に使えるようにした。ブロガーには記事に対する金銭的な報酬を支払うことはなかったが,関心を持ったブロガーが記事を執筆し,8528本の記事が書かれたという。

 一方,ルイ・ヴィトンは,サイバーエージェントの子会社プーペガールのファッション専門SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「プーペガール」で2週間限定の仮想店舗をオープンした。SNS上のアバターが身に付けるバッグや靴などで,ルイ・ヴィトンの製品を用意し,着こなしを疑似体験できるようにした。その結果,「スティッチ(縫い目)の数まで本物通りに再現するなどディテールにまでこだわったデザインが話題を集めた」(須田氏)。

 最後に須田氏は「情報発信をする生活者の気持ちをしっかりくみ取り,提案をしていけば,生活者は積極的に盛り上げてくれる」と語り,「今後,新しいサクセス・ストーリーを会場の皆様と一緒に作っていきたい」と講演を締めくくった。