はてな 執行役員 最高技術責任者 伊藤直也氏(写真:日経ソフトウエア 矢崎茂明)
はてな 執行役員 最高技術責任者 伊藤直也氏(写真:日経ソフトウエア 矢崎茂明)
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新しいはてなブックマークのトップページ
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プリファードインフラストラクチャー 最高技術責任者 太田一樹氏(写真:日経ソフトウエア 矢崎茂明)
プリファードインフラストラクチャー 最高技術責任者 太田一樹氏(写真:日経ソフトウエア 矢崎茂明)
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新しいはてなブックマークのブックマークページ
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 はてなは同社ソーシャル・ブックマークサービス「はてなブックマーク」の次期版を,11月上旬にブリックベータ公開する。新しいブックマークは検索やソーシャル機能を強化。またブックマークを生活や経済などのカテゴリに自動分類,これまでの中心だったIT関連の話題だけでなく「より多様な話題を扱えるメディア,コミュニティにしていきたい」(はてな 執行役員 最高技術責任者 伊藤直也氏)。

 正式リニューアルはすでに予告していたように2008年11月25日に行う。はてなではリニューアルにより現在の20万会員を,2009年夏までに30万に,ユニークユーザー数を現在の300万から倍の600万に拡大することを目標としている。

 伊東氏は,はてなブックマークは次のような問題を抱えていたと言う。「検索機能が乏しい。デザインが古めかしい。ジャンルが偏っている。ネガティブなコメントがページ作者にダメージを与えるケースがある」。これまでシステムを改善してきたが,抜本的に問題を解決することは「もともとは開発合宿で短期間に作ったシステムであり,難しい」(同)ため,一から作り直した。

インクリメンタル検索,自動分類,ソーシャル機能

 検索機能は,一文字入力するごとに候補を絞り込むインクリメンタル検索。「画面遷移なしで瞬時に取り出せる。ブックマークでの全文検索技術は世界的にも新しい」(伊藤氏)。

 プリファードインフラストラクチャーと協力,同社の検索エンジンSedueを利用し検索機能を実現した。プリファードインフラストラクチャーはICPC(ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト)世界大会などで知り合ったメンバーが設立したベンチャー企業で,Sedueの原型は未踏ソフトウェア創造事業で開発した。

 「検索結果には,はてなブックマークらしいランキングが表示されるようにこだわった。ブックマーク数と情報鮮度に基づいた独自アルゴリズムで,必ずしも公式サイトでなく,情報量が多く注目されているものを上位に表示するようにした」(プリファードインフラストラクチャー 最高技術責任者 太田一樹氏)。

 検索連動型広告も導入する。「収益拡大の目玉」(伊藤氏)。

 カテゴリの自動分類機能もはてなとプリファードインフラストラクチャーと共同開発した。エントリーを「生活・人生」「スポーツ・芸能・音楽」「おもしろ」などのカテゴリに分類することで,これまでIT系の話題に埋もれていた様々な話題が見えてくることを狙う。「(米国の代表的なブックマークサービスである)Diggもカテゴリを導入したことで話題が多様になり,技術系の話題は70%から20%になった」(伊藤氏)。

 ソーシャル機能としては,「お気に入り」機能を強化した。「お気に入り」は,他のブックマークユーザーを登録できる機能。リニューアル後はブックマーク画面に自分のお気に入りの人のコメントが表示されるようになった。また自分が誰に気に入られているかわかるようになり,お気に入りに入れ返す事ができるようになった。検索結果や動画などにもお気に入りが表示され「みんなが選んだ,だけでなく,友人が見ているなら見てみようという見方ができる。ユーザー体験が変化する」(伊藤氏)。

1クリックでコメントを非表示に「今後は社会面を改善」

 「ネガティブなコメントがページ作者にダメージを与える」という問題については,1クリックでコメントを非表示にすることができる機能を作成した。ただし「これで十分だとは思っていない」(伊藤氏)。ログインしなければコメントを非表示にできないため,ゲスト・ユーザーはコメントを目にすることになってしまう。「はてなに連絡していただければ人手でサポートできるが,システムでサポートできるようにすることを考えたい」(同)。

 現在のはてなブックマークは伊藤氏が開発したが,新しいブックマークはチームで開発した。「チームの人数は4~5名」(伊藤氏)。カテゴリ判定はCompliment Naive bayesアルゴリズムを採用している。ページから本文を抽出するツールはHTML::ExtractContent,サイボウズ・ラボのものを参考に一から作り,オープンソースとして公開している。ページを収集するクローラはHadoopを用いて新規開発した。「はてなにインターンとして来た学生が作った」(伊藤氏)。

 問題点としては,旧はてなブックマークでカスタマイズしたデザインやテーマが利用出来なくなる点がある。「システムが大幅に変わったため,やむなく変更した。深くお詫びする」(伊藤氏)。またエントリーの概要を編集する機能は廃止する。「有意義な利用ケースが少なかった」(同)。

 リニューアル後は,機能面に加え社会面ではてなブックマークを進化させていきたいと伊藤氏は言う。例えば「はてなブックマーク市民」というような仕組みを作りたいと考えているという。はてなダイアリーには30日以上日記をつけると「はてなダイアリー市民」になりキーワードの編集などができるようになる仕組みがある。「はてなブックマーク市民」はそのブックマーク版だ。「さらに発展させて,『はてなブックマーク議員』というような,フォーラムのシスオペのようなことができるようになる仕組みも検討している」(伊藤氏)。そのほかコメントのモデレーション機能,ページのツリー表示によりブックマークコメントで文脈をたどり会話ができるような機能も検討している。「今回は機能レイヤーをリニューアルした。今後は社会レイヤーを改善していく」(伊藤氏)。