写真●富士通の野副州旦社長
写真●富士通の野副州旦社長
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 富士通は2008年11月4日、独シーメンスとの合弁会社であるオランダの富士通シーメンス・コンピューターズ(FSC)の全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。従来は富士通とシーメンスがFSCの株式を50%ずつ保有していたが、シーメンスの保有する全株式を富士通が取得することで合意した。株式の取得金額は約4億5000万ユーロ(約560億円)。09年4月1日に株式を取得する。

 FSCの07年度における売上高は66億1400万ユーロ(約8300億円)、営業利益は7200万ユーロ(約90億円)。従業員は約1万人。売り上げの構成は、法人向けパソコン事業が約28%、サーバー事業が約25%、個人向けパソコン事業が約19%、サービス事業が約17%となっている。IAサーバー、パソコンはともにEMEA(欧州/中東/アフリカ)で市場シェア4位だ。

 富士通の野副州旦社長は株式取得の理由について「IAサーバーを強化しグローバルで展開していきたい富士通と、本業の『エネルギー』『ヘルスケア』などの分野に集中したいシーメンスの思惑が一致した」と話す。

 従来は「FSCが主体となってIAサーバーを開発していたので、日本国内に製品を投入するまでに半年から1年の遅れが生じた。製品も地域ごとに若干の違いがあった」(野副社長)。今後、グローバルでIAサーバーのラインアップを統一し、開発をFSCに一元化していく意向だ。

 11月3日には、FSCのCIO(最高情報責任者)やCFO(最高財務責任者)などを歴任したカイ・フローレ氏がFSCの社長に、富士通の海外ビジネスグループ長であるリチャード・クリストウ氏が会長にそれぞれ就任した。

 FSCの売り上げ全体の約2割を占める個人向けパソコン事業は、現在「2ケタ億円前半の赤字が出ている状況」(富田達夫副社長)。野副社長は「09年4月の完全子会社までに、何らかの手を打つ」と語り、個人向けパソコン事業から撤退する可能性を否定しなかった。

 FSCを連結対象に加えた場合、富士通全体の売り上げに対する海外売上高の比率は約38%になる。富士通は中期目標で、10年3月期に海外売上高比率40%の達成を掲げている。07年度の海外売上高比率は36.1%だった。今回のFSCの完全子会社化で目標達成に一歩近づいた形だ。

 もう一つの中期目標の柱である売上高営業利益率5%の達成は、非常に厳しい状況だ。業績予想によると、09年3月期に営業利益率が3%程度に落ち込む見込みとなっている(関連記事)。野副社長は「必ず中期目標を達成したい。08年度のうちに、09年度に目標達成できるような手を打つ」と語った。FSCの個人向けパソコン事業や、売り上げ約3000億円にもかかわらず100億円超の赤字を出しているハードディスクドライブ事業が売却や撤退の対象になる可能性は高い。