第7回北東アジアOSS推進フォーラム会場
第7回北東アジアOSS推進フォーラム会場
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 2008年10月31日,日本と中国,韓国の産官によるカンファレンス「第7回北東アジアOSS推進フォーラム」が中国の無錫で開催された。

 北東アジアOSS推進フォーラムは日中韓のオープンソース推進組織が共同で開催している会議。2003年から日本,中国,韓国を会場に開催されている。

中国はOSSの消費者から貢献者に---中国OSS推進連盟

中国OSS推進連盟 主席 Lu Shouqun(陸首群)氏
中国OSS推進連盟 主席 Lu Shouqun(陸首群)氏
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 基調講演に登壇した中国OSS推進連盟 主席の陸首群(Lu Shouqun)氏は中国におけるオープンソース・ソフトウエアの普及状況を紹介した。中国における2007年のLinux出荷額は前年比27%で,政府機関や教育から,金融,通信,鉄道,電気,石油などさまざまな業種に広がっているとした。

 陸氏は「中国はオープンソース・ソフトウエアの消費者から貢献者になった」と語る。現在,中国には50以上のオープンソース・コミュニティが存在している。中国OSS推進連盟とThe Linux Foundationは2008年2月に北京でLinux開発者シンポジウムを開催した。中国では3回のオープンソース・ソフトウエア・コンテストを開催,約2万人が参加した。2007年に中国OSS推進連盟が表彰したFu Wenqing氏は,Linuxカーネル2.6.27にFu氏の572件のパッチ,7万3724行に貢献し,一人で2.6.27での変更のうち0.5%近くを行ったという。

 Kingdeeが開発したオープンソース・ミドルウエアは5万回ダウンロードされた。Apusicが開発したオープンソースのアプリケーション・サーバーも開発されている。日中韓のほかフランス,ロシア,フィンランドともオープンソースに関する協力関係を結び,Apache,MySQL,Firefox,OpenOffice.orgなど国際的なオープンソース・コミュニティとも協力関係にあるという。

Linuxサーバーが急成長---韓国OSS推進フォーラム

韓国OSS推進フォーラム会長 Kou ken(高健)氏
韓国OSS推進フォーラム会長 Kou ken(高健)氏
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韓国のLinux市場
韓国のLinux市場
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 韓国OSS推進フォーラム会長 高健氏は「韓国のLinuxサーバー市場は急成長している」とする。韓国のサーバーOS市場におけるLinuxのシェアは,2004年の19.2%から,2007年には26.2%になった。公共関連市場に限れば2004年の26.2%から,2007年には37.4%に達している。その理由は韓国政府が電子政府システムにLinuxを優先的に採用していることにある。

 また韓国では教育現場向けにデジタル・テキストブックと呼ぶLinuxとOpenOffice.org搭載端末を開発している。2008年には20クラス,800人の生徒がデジタル・テキストブックを利用。2013年までには4万人の生徒が利用する計画だ。

 人材育成の面においては「OSS-Based Education Renovation Projet」と呼ぶプロジェクトのもと,大学の授業をプロプライエタリなソフトウエアからオープンソース・ソフトウエアに移行している。15大学の152のクラスでオープンソース・ソフトウエアに移行したという。

世界をリードする人材を輩出---日本OSS推進フォーラム

日本OSS推進フォーラム 代表理事 NEC 代表取締役 矢野薫氏
日本OSS推進フォーラム 代表理事 NEC 代表取締役 矢野薫氏
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 日本OSS推進フォーラム 代表理事でNEC 代表取締役 矢野薫氏は「2011年までに少なくとも大企業の50%が複数の分野でオープンソース・ソフトウエアを利用する」とのガートナーの調査結果を示し,オープンソース・ソフトウエアがエンタープライズに広まっているとした。

 また矢野氏は「日本がリードするコミュニティの活動は世界に広がっている」と語った。「まつもとゆきひろ氏が開発したRubyは海外に数十万のユーザーがいると言われ,宮川達彦氏はPerlの貢献者に与えられる白駱駝賞を日本人として初めて受賞した」(矢野氏)。

日本のオープンソース・ソフトウエア利用状況
日本のオープンソース・ソフトウエア利用状況
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日本からオープンソース・コミュニティのリーダーが生まれている
「日本からオープンソース・コミュニティのリーダーが生まれている」日本OSS推進フォーラム 代表理事 矢野薫氏
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 矢野氏は「イノベーションのドライバとしてのオープンソース・ソフトウエアの役割」を強調。プロダクトの時代から,次の波であるサービスの基礎となるのがオープンソース・ソフトウエアなどであると指摘した。

 オープン・イノベーションを推進するために,日本のIPA オープンソフトウェア・センターでもオープンな標準に基づくソフトウエアの普及推進を進めている。またNECでも,社外研究機関との積極的な交流,スペースの開放などにオープンイノベーションの促進に取り組んでいるという。