写真●マイクロソフトの基礎研究部門を率いるリック・ラシッド上級副社長
写真●マイクロソフトの基礎研究部門を率いるリック・ラシッド上級副社長
[画像のクリックで拡大表示]

 「基礎研究の価値については、しばしば誤解がみられる。なぜマイクロソフトが基礎研究に莫大な金額を投じるのか。それは時代の変化に即応して生き残るための俊敏性を身につけるためだ」。PDC 2008の3日め、基調講演に立ったリック・ラシッド上級副社長(写真)はこう主張した(関連記事:[PDC 2008]「マイクロソフトの未来技術」を支えるMSRの全貌)。同氏はマイクロソフトの基礎研究部門を統括している。

 マイクロソフトの年次報告書によれば、2008年度の研究開発投資は前年度比15%増の82億ドル(8200億円)。NEC、日立製作所、富士通、NTTデータの営業利益の合計よりも多額を投じている計算だ。

 これほどの巨費であるだけに、製品や事業に関する「目の前の問題」解決へもっと充てるべきだとする、社内外の圧力があるという。しかしラシッド上級副社長は「基礎研究は極めて重要な価値を持つことを、改めて強調しておきたい」と述べる。

 「基礎研究部門とは、いわば早期警戒システムだ。ほんの少し先を見通しながら、生き残るための力を与えてくれる」。ラシッド上級副社長はこんな表現で、基礎研究の意義を強調した。パソコンとソフトの時代からクラウドとサービスの時代にさしかかり、かつてない競争にさらされているマイクロソフトだけに、その言葉は切実なものだろう。